南アルプス南部 (椹島-千枚小屋-千枚岳-悪沢岳-赤石岳―百間洞-兎岳)  悪沢岳:3141m、赤石岳:3120 m 

    南アルプス南部の縦走中の事故から2か月が経ち、後遺症が残っているもののようやく登山中及び事故の記録を書ける状態になった。とはいえ、複視がまだ残っているので本を読んだり、パソコンの画面を見るのはややつらい。

    今年の8月は雨が多く登山に適した日が少なかった。8月末になってようやく天候が安定して来たので、久しぶりに南アルプス方面に行こうかと、椹島から千枚小屋、悪沢岳、赤石岳、聖岳から茶臼小屋を経て畑薙ダムに下る計画を立てた。この地域は31年前と18年前にテント泊で上がって以来である。

    歳を取って来たのでこのルートを行けるかどうか不安があったが、小屋泊まりでいざとなれば延泊あるいは途中の赤石岳、あるいは聖岳から下れば良いかと考えた。歩くペースが遅くなって途中で避難小屋などに泊まることも有り得ると考えて、小型コッヘル、ガスバーナー、ガスカートリッジ、フリーズドライの食料、エアーマット、夏用寝袋なども持参したため、荷物は10kg近くになってしまった。小屋泊まりに徹して荷物を軽くするべきであったかもしれない。

    最初はほぼ順調に進み当初の予定通り行けそうであった。ところが3日目に、足腰の疲れが溜まったせいもあるだろうが、なんでもない登山道で石に躓き前に転倒。不運な事に前面にあった尖った岩に顔面を殴打し大怪我をしてしまった。歳を取って来て、とっさの瞬発力、反射神経が落ちていることを実感せざるを得なかった。

   その後、ヘリで救助されて病院に入院手術を受けたが多くの人のお世話になった。事故及びその後の経緯については自戒の意味も込めて詳しく後述する。
   
2017年8月27日(日) 晴れ時々曇り
   単独
 椹島(8:05)-清水平(11:50~12:00)-見晴台(13:00~13:10))-
駒鳥池(14:05~14:25)-千枚小屋(15:30)
  

    前日の夕方に町田での用が終わった後、車で圏央道、東名高速道、新党名高速道を乗り継いで新静岡ICで高速道を降りた。下りて直ぐのコンビニで翌日の朝食を買い込んだ後、暗い夜道をを安倍川沿いに進んだ。何度か通った道である。

    途中で左側の井川方面に進み、くねくねした山道を慎重に進んで山越えをして井川の集落に到着。このまま、さらに畑薙方面に進んで夏季臨時駐車場の標識がある所に達した。24時を少し過ぎていた。右側の広い駐車場には沢山の車が停まっていた。空いている駐車スペースに止まり車中泊をした。

    6時前に起きて簡単な朝食を取り登山の準備をしていると、何人かの登山者が上の道路の方に上がった行った。上の道路では車が来ていて人声が聞こえている。上がって見るとマイクロバスが停まっていて、今日は7時前に椹島までの臨時バスが出ますとの事。

   急いで車に戻ってザックを担いで戻り3千円を払ってマイクロバスに乗った。3千円分は小屋に泊まるときに割り引くので領収書の切符は落とさないでくださいとの事。マイクロバスは登山者でほぼ満車状態になり、6時45分に出発した。

   マイクロバスは1時間ほどで椹島に到着。ここでゆっくりしてトイレに行き、水を補給してペットボトルに入れて、用意した登山計画書を登山届ボックスに入れて8時過ぎに出発した。少し道路沿いを歩いた後、滝見橋の脇から千枚小屋方面の登山道を進んだ。初めは急斜面であったが、やがてなだらかな林間の登山道となり、ゆっくり進んで昼前に清水平に到着。ここで水を飲み行動食を取った。

滝見橋の手前から登山道を行く                登山道から見た赤石岳                    針葉樹の樹林帯を進む
    

   さらに、オオシラビソの中の登山道を進んで行くと、見晴台の手前に出た。見晴台の上から3人連れが下りてきた。わずかな登りで見晴台に行けますよ。赤石岳などの見晴しが良かったとの事で、やや疲れた手いたが自分も上がった行った。反対側には林道が続いていた。正面には荒川三山、赤石岳の眺望が良い。しばらく休んで眺望を楽しんだ後、歩きだした。

見晴台から仰ぎ見る赤石岳                 見晴らし台から見る
                   駒鳥池に下る   
    


   1時間弱で下方に駒鳥池が見えた。少し下って駒鳥池の傍らまで行き眺めた。駒鳥池から針葉樹林帯を進むと、10人くらいのツアーの団体が下りてきた。この時間では下の椹島まで行くとすると暗くなるのにと新派下が、彼らは林道をマイクロバスで下るようであった。

駒鳥池                               針葉樹林帯を進む                   傍らにトリカブト
    

   疲れたが何とか千枚小屋に4時前に到着。やはり昭文社の登山ガイド地図のコースタイムより若干時間がかかった。1泊2食の宿泊をお願いした。山小屋は結構大勢の登山客でにぎわっていた。

2017年8月28日(月) 曇り時々晴れ
   単独
 千枚小屋(5:10)-千枚岳(6:00~6:05)-悪沢岳(7:30~7:40)-荒川小屋(10:20)-大聖寺平(11:10~11:20)
―赤石岳(13:25~13:35)-百間洞山の家(16:35)


   朝、4時頃に起床。やや疲れは残っているが、調子は悪く無い。周りの登山客も起き出していた。4時半から朝食。朝食後、準備して5時過ぎに千枚岳を目指して尾根筋を上がった。雲の上から朝日が出てきて御来光を拝む。雲間からの富士山の眺望が素晴らしい。

千枚小屋の上の尾根で御来光               雲の上に富士山が                      これから上がる赤石岳
    


   一時間足らずで千枚岳に到着。尾根筋は8月末であるにもかかわらず高山植物の花が沢山咲いていた。さすが南アルプスである。比較的ゆっくりペースで歩いて悪沢岳に到着。1時間半かかっておらず、まずまずのペースである。

悪沢岳を仰ぐ                           千枚岳                              悪沢岳山頂で
    


   悪沢岳から急な下ってから、中岳の登りにかかる。中岳避難小屋を通り、三伏峠方面への分岐点をに達した。登山道はやや広い尾根筋で長い下りが続いた。周囲は高山植物の花が一面咲いていた。

悪沢岳から見る富士山                     悪沢岳を下る                         中岳避難小屋
    


   荒川小屋を通過し、大聖寺平でしばらく休憩。ここから急な登りで小赤石岳に到着。やや疲れが出て来て、ペースが落ちてきた。しばらく進むと東尾根を行く分岐点になる。分岐点からの登りで、昨日登りであった3人連れが下りてきた。彼らは今日は赤石小屋に泊まり、明日下山するとの事であった。

三伏峠方面への分岐点                     大聖寺平                            赤石岳山頂
    


   誰もいない赤石岳に1時半前に到着。しばらく休んでから百間洞に向かった。赤石岳からの下りは苦手の岩がごろごろした急斜面の連続で足に応える。ストックを頼りにゆっくり下ったが、足の筋肉痛が出て来て疲れも出て来た。

赤石岳からの下り(苦手な岩がごろごろしている急斜面)                               尾根筋から百間洞に下る
    

  
   ペースはかなり遅くなり、百間洞山の家に到着したのは4時半を過ぎていた。以前のような調子で歩けないのを実感した。

   牛丼とビールで夕食を取り、休んでいる間に疲れと筋肉痛は少しづつ取れて来た。

本日お目にかかった高山植物
タカネマツムシソウ          シシウド             タカネビランジ           タカネナデシコ         イワギキョウとイワツメクサ
    


 ウスユキソウ                                  トウヤクリンドウ          ミヤマイタドリ        ミヤマダイコンソウ  
    


  2017年8月29日(火) 晴れ時々曇り
   単独
 百間洞山の家(5:20)-中盛丸山(7:10~7:15)-小兎岳(8:15)-水場往復(8:30~8:45)-兎岳手前の鞍部、転倒し顔面を岩に強打(9:30)
―兎岳、避難小屋で休憩(10:20~10:30)


   4時前に起床。同宿者もほおtン度起きて来た。4時半から山小屋の朝食が開始。準備して明るくなり出した5時20分に歩き出した。寝ている間に疲れはほとんど取れたが足のふくらはぎ、大腿部の筋肉痛はやや残っていた。ゆっくり歩いて上がり、未だか未だと思っているうちに稜線に出た。


百間洞山の家を夜明けとともに出発             中盛丸山                             小兎岳
    



   しばらく稜線沿いに上がると中盛丸山に到着。調子は悪く無い。急な下りの後、急な登りで小兎岳に到着。途中で2羽の雷鳥が間近に見えた。逃げる様子も見せず、餌をついばんでいた。

        雷鳥が間近に見える
         


   稜線を少し行くと左側に矢印がペンキで書かれていた。登山道はそのまま行くのだろうが、この矢印通り行くとどうなるのだろうかと思い急斜面を下りて行った。5,6分下ると沢が流れていた。水場であった。急いで登り返したが、結構きつかった。上がり切った所で矢印をよく見るとミズバと書かれてあった。やらないで良かったこの往復は10分以上かかり、疲れた上に筋肉痛が出て来た。

   少し休んでから平坦な登山道を進むと小ピークに出た。このピークからの下りは岩がごろごろしている急斜面でストックを頼りに慎重に下ったが、足の筋肉痛で踏ん張りが利かなくなり転びかけた。ようやく短いが急な斜面を下り切り、兎岳手前のコルの平坦な登山道となった。やれやれとスピードを上げて歩きだしたのが間違いであった。
  
   ストックをついて歩調を早めた所で登山道上の石に躓いて前に転倒。不運なことに前面には大きな尖った岩があり、勢いがついていたので顔面が岩に激突してしまった。

   額が大怪我をして血が流れ出していることが分かった。急いで、首に巻いていたタオルを出血止めのため額に強く巻いた。緊張していたのとあまり痛みを感じなかったので、怪我は大したことは無いと考えてザックを背負ってストックを頼りにゆっくりと兎岳山頂まで上がった。

   しかし、これ以上自力で歩き通すことは無理だと思い、兎岳山頂でザックを下ろし携帯電話を掛けようとしたが通話圏外であった。丁度通りかかった単独行のNさんに持っていた登山計画書のコピーを渡して、警察への救助依頼を連絡してくれるようにお願いした。

   その後、警察、山小屋関係者、医師、看護師など病院関係者など多くの皆さんのお蔭で助かることが出来た。改めて感謝する。

  事故及びその後の経緯、反省点などの詳しい記録は自戒の意味も込めて別の項で記載する。