燕岳−大天井岳−常念岳−蝶ヶ岳−徳本峠 (テント泊、3泊4日の縦走)

  毎年、夏に一回は行っているテント泊の山行。高齢になり下山中の膝の痛みがあり、だんだん重い荷物を背負って行くのがつらくなってきた。8月上旬の荒沢岳を無事に行けたので、少し自信がついて今回テント泊の縦走を計画した。

   計画では中房温泉より燕岳に上がり、大天井岳、常念岳、蝶ヶ岳、徳本峠を経て上高地に下山する。この行程、以前なら2泊3日で充分行けるコースであるが、今回は余裕をもって3泊4日とした。また、いざとなったら途中の常念岳あるいは蝶ヶ岳から下山することもできるし、山小屋に泊まればよい。

  荷物を出来るだけ軽くするため、食料はすべてお湯を注ぐだけで食べられるフリーズドライの物とフランスパンにした。それでも、テント、エアーマット、寝袋、着替え、雨具、2Lのポリタンク、コッヘル、バーナー、ガスボンベ、食糧、非常食などを入れると3泊4日分で12〜13kgになる。

  山歩きでは膝が痛くなるので山の店で薦められた足をサポートすると言うタイツを利用し、さらに下山では膝のサポーターも使って見ることにした。

  お盆休みが終わった直後で、山も山小屋もそれほど混んでいないだろうと思ったが、結構大勢の登山者に出会った。初日を除いて天候は余りよく無く期待した槍、穂高の連峰を見ながらの山行とは行かなかった。途中で雨に降られたりしたのは残念であったが、テントを担いで無事に予定通り歩けたのは幸いであった。
2013年8月19(月) 晴れ時々薄曇り
   単独
  中房温泉(6:20)-合戦小屋(9:25-9:50)−燕山荘(11:00〜12:00)−燕岳(12:30〜12:45)−燕山荘(13:10)
   登高標高差:1520m、下降標高差:200m (GPS より)

   前日の夜、登山口の手前の穂高温泉郷の登山者用無料駐車場に行き車中泊。明るくなり出した4時20分起床。簡単な朝食を取り、準備をしてシャクナゲ荘前のバス停で始発の中房温泉行のバスを待った。バスを5時15分にやってきて中房温泉に6時ごろ着いた。さすが人気のアルプス銀座コースの出発点。大勢の登山者がいた。用意して入り口で登山届を出して出発。
    出だしから林間の中の急登が続く。久しぶりの重い荷物を背負っての山行で慣れるまでのしばらくはつらかった。暑く無いのが救いである。ゆっくりゆっくり歩を進め次々と後続の登山者に追い越された。休みながら歩を進めているという感じで、合戦小屋まで一度も休憩を取らずにほぼ3時間で上がり切った。途中で追い越して行った人が休んでいる間にこちらが追い越して行った。ちょうど兎とカメのカメのようである。結局ガイド地図のコースタイムにほぼ近い時間であった。
    合戦小屋では大勢の登山者が休憩していた。自分もベンチに座り休憩。おいしそうなスイカを売っており、次々と登山者が買って食べている。自分もつられて500円を出してスイカを買った。甘くて冷えていておいしかった。
     休憩とスイカで元気を取り戻して再び歩き出した。灌木と草原の尾根伝いの登山道が傾斜が緩くなり歩き易くなった。一時間ちょっとで燕山荘に到着。この合戦尾根ルートは日本3大急登だそうであるが、思った以上に楽に上がることが出来た。と言っても以前上がった2回と比べたら時間がかかりつらかった。前の2回は大天井岳まで行ったが、今回はここでテント泊とすることにした。
    燕山荘でテント泊の登録をしてテントサイトを確保してテントを設営。すでにテントを張っている人も結構いたが、比較的早い時間であったので良いサイトを確保できた。さらに、山小屋で食事のみを頼むことが出来るという話であったので、ためしに2700円を出して夕食だけを予約した。

   燕岳                                         燕岳から見る大天井岳                
          

    テントを張ってから、空身でGPSとカメラを持って燕岳まで上がった。途中の登山道の周囲には盛りは過ぎているがピンクのコマクサが咲いてい
  た。30分かかって燕岳山頂に到着。やや雲がかかっているが周囲の山々の眺望が素晴らしい。特徴的な槍ヶ岳の穂先、さらにその向こうには穂高連峰。目の前には明日行く大天井岳。反対の北川には餓鬼岳。東側には有明山。西側は裏銀座縦走コースの水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳の山々が連なっている。しばらく周囲の山を見ながら休憩後テント場に戻った。

 燕岳から見る槍ヶ岳                 鷲羽岳周辺の北アルプス最深部の山々    乗鞍岳が遠方に見える
  

    燕山荘で500円也のビールを買い、昨日コンビニ買ってきたおにぎりでビールを飲みながらの昼食。後は休憩するのみ。テントの中でエアーマットを広げて休んだが陽射しが強くテントの中は暑い。日陰に座っていると丁度良い。
    燕山荘での夕食は5時から。大勢の登山者がいて食堂は満席。ビールを飲みながら山小屋の夕食を取った。昔と比べて山小屋の食事も良くなった。食事の後は小屋主の山についての話があった。ここは登山初心者が多いので山での安全についての話をしますとのこと。雨や汗で濡れて風にあったら夏山でも危険だとの話など。その後、アルペンホルンの演奏。暗くなる前にテントに戻った。残念ながら雲が広がり満点の星を見ることは出来なかった。後は寝るだけ。

     

8月19(火) 曇り時々晴れ、後小雨
   単独
  燕山荘(6:10)-大天井岳(9:10-9:50)−常念乗越(13:10)
   登高標高差:845m、下降標高差:1040m (GPS より)

   明るくなり出した4時20分起床。お湯を沸かしてコーンスープを作り、前日食べ残したコンビりのおにぎりとパンで朝食。テントを撤収し準備をして出発。前方の大天井岳くらいは見えるが、残念ながら曇っていて遠方の眺望は効かない。歩き易い尾根通しの登山道をゆっくり進んだ。ここでも登山道の周囲で所々でコマクサの群落がある。

のんびりと登山道を歩く                前方に大天井岳                    大天井岳頂上の標識とお宮
   

   最後の登りで大天荘に到着。荷物を置いてわずかな登りで大天井岳の頂上に達した。今回の山行ではもっとも標高が高い2922mである。雲が掛っていて東側の標高の低い有明山は見えるが、これから向かう常念岳の頂上付近は雲に覆われている。西側の槍ヶ岳、穂高岳、双六岳などは雲に覆われて全く見えない。
  大天荘まで戻って行動食を取った後、ザックを担いで歩き出す。東天井岳、横通岳を通る登山道は歩き易い。晴れていれば雲上の散歩コースとな

コマクサの群落                    イワギキョウ?                    猿がじっとこちらを見ていた
  

るはずだが雲に隠れて見えない。横通岳からが苦手の急な下りとなった。ゆっくりゆっくり下って常念乗越に到着。この下りの途中で何人かの登山者に追い越された。

 横通岳に至る登山道                常念岳を見ながら常念乗越まで下る       テントを設営
  

   常念小屋でテント泊の登録をしてテントの設営をし出したら小雨が降ってきた。急いでテントを張り荷物をテントの中に入れた。手拭いで濡れた個所を拭き、手拭いを絞っては拭きを繰り返して濡れた個所を最小限にとどめた。
   雨の止むのを待って小屋で買ったビールを飲みながら非常食のナッツ類とパンで昼食。小雨が降ってくるのでテントの中で寝転んで休憩。時々雨が激しくなる。雨が上がった4時半過ぎにお湯を沸かしてフリーズドライ2袋とみそ汁の夕食。
   その後再び雨が降ってきた。後は寝るだけだ。小雨はずっと降り続いていた。夜半にはかなり激しい雨となりテントをたたく雨音を聞きながら寝ていた。エア―マットの上で寝ているので良いが、その下のテントの中にはかなり水が入ってきた。荷物はすべてポリ袋に包んであるので中までは濡れずに済んだ。

8月20(水) 小雨時々曇り
   単独
  常念乗越(7:50)-常念岳(9:00-9:05)−蝶ヶ岳(13:50)
   登高標高差:1100m、下降標高差:830m (GPS より)

   明るくなった5時前に目が覚めたが雨が降り続いていた。雨の中でのテント撤収はやりたくないので雨が小やみになるまで待って横になっていた。6時半過ぎにようやく雨が小やみになったので起きてフランスパンだけで朝食とした。テントはやや傾斜した所に立てたので下側の内部は水浸しとなって水が溜まっていた。
   雨が止んだ合間にテント内の水をタオルで吸い取り絞っては吸い取る操作を繰り返した。さらに水で濡れたエアーマット、いろいろの物を入れたポリ袋類を手拭いで丁寧にふき取った。寝袋も外側の一部が濡れていた。これらをすべて収納しテントの外に出した。最後に水滴が沢山付いているテントをタオルで拭き取り撤収しすべてをザックに詰めた。
   上半身だけは雨具を着てザックを担いで歩き出したのは8時前。かなり遅い出発であった。目の前の常念岳のかなり上の方を上がっている登山者の列が見えた。歩き出してしばらくすると再び小雨が降りだして来た。小雨の中を常念岳に上がる急斜面の登山道を黙々と歩いた。途中で頂上から戻ってくる登山者に何度か会った。

常念岳頂上にあるお宮              頂上の標識                    穂高連峰のは雲の中、下部の梓川が見える
  

  一時間ちょっとで常念岳の頂上に到着。先行の登山者4人がいた。霧で周囲は全く見えない。頂上の写真を取っただけで下り始めた。小雨の中、苦手な急な下りが続いた。途中で2人連れを追い越し、さらに複数の学生のグループを追い越して進んだ。その後、登山道を見誤って下に降りかかったが間違いに気づいて登り返した。その間に追い越した学生のグループは先に行っていた。

途中で見た高山植物
ニッコウキスゲ             ミヤマトリカブト           クルマユリ             ハクサンフウロ
   


   しばらくして再び学生のグループを追い越した。彼らは大きなザックを背負っており休憩を取りながらゆっくりと歩いているようであった。晴れていれば槍、穂高連峰を見ながらの楽しいルートのはずだが、小雨が降ったり止んだりで周囲の山々は雲に隠れて全く見えない。歩くのが嫌になった所で反対方向から来た2人連れの登山者に出会った。彼らは横尾から上がって来たと言う。蝶ヶ岳まではまだ一時間半はかかるでしょうとのこと。
   鞍部から再び急斜面の登りとなり上がり切った所が蝶槍。その後、ほぼ平らな歩き易い尾根道を進んで蝶ヶ岳ヒュッテに到着。 時間は未だ2時前。このまま先に行けば4時前には大滝山の山小屋に到着するだろうと先を行った。
   しかし、小雨が降ったり止んだりする中を歩いてもつまらない。明日早立ちすれば良いのだからと思い直して引き返した。蝶ヶ岳ヒュッテで本日は混んでいますかと尋ねたら、これから登山者がやって来るのでよく分からないがおそらく混むことはありませんとのこと。濡れたテントと寝袋でのテント泊は不快なので小屋泊まりすることに決めた。

    蝶ヶ岳ヒュッテに宿泊                                 蝶ヶ岳頂上
         

   持参した食料はまだかなり残っているので素泊まりをお願いした。確かに小屋は混んでおらず2人分のスペース、寝具を一人でゆったりと使うことが出来た。さらに乾燥室があり濡れた衣類、雨具、靴などを乾かすことが出来た。コーヒーを買いフランスパンでゆっくりとストーブに当たり遅い昼食を取りながら同宿の登山者と歓談。5時過ぎに自炊用のテーブルでお湯を沸かしフリーズドライ2袋と御吸い物でビールを飲みながら夕食。
   テレビの気象情報では明日は天気は良いが、高い山は霧か雲。それでも今日よりずっと好天が期待できそう。7時半から小屋に常駐している名古屋市立大学のお医者さんの話を聞いた後就寝。雨の心配をせず良く眠れた。混んでいなければ山小屋泊も良いなと思った。

8月21(木) 晴れ
   単独
  蝶ヶ岳ヒュッテ(5:00)-大滝山(6:40-6:50)−槍見台(9:35〜9:45)−徳本峠(12:15〜12:40)−明神(14:25)−上高地(15:25)
   登高標高差:750m、下降標高差:1800m (GPS より)


   まだ薄暗い4時頃に目が覚めた。御来光を期待して起き出している人もいた。寝具をたたみ朝食を取らず準備をして小屋を出たのは5時少し前。辺りはもう明るくなってきた。気象情報通り霧や雲が掛ってくることはあるが天気は良さそうである。
    昨夜はよく眠れたので快調に進んでガイド地図のコースタイムとほぼ同じ時間で大滝山に到着。小屋の前のベンチに座りフランスパンと水で軽い朝食を取った。大滝山から徳本峠までの中村新道はシラビソの林間の中の登山道で雰囲気が良い。奥秩父の山を歩いている感じがする。

昨日歩いた常念岳に至る尾根通し         朝日が出てきた、下部は雲海           大滝山小屋で休憩
  

    しかし、蚊やブヨが多いのには閉口した。おまけにアップダウンが多くて疲れた。徳本峠から来たと言う2人連れの登山者2グループに途中で会った。止まると蚊に襲われるので休むことなく歩いて槍見台まで来た。槍見台では台の上に上がって見たが、残念ながら槍穂高は雲に隠れて見えなかった。ここでも蚊が多く耳触りは羽音が聞こえ何か所か刺された。

シラビソの林間の登山道              槍見台から見る穂高連峰             明神見晴らしから見る明神岳
  

    槍見台から明神見晴らしを通過。明神岳の岸壁も上部は雲に隠れて見えない。未だか未だかと思いながらアップダウンを繰り返してようやく徳本峠に到着。徳本峠小屋でビールを買いベンチでビールを飲みながら残りのフランスパンで昼食。
    徳本峠は古くから穂高連峰の展望台として有名で、自分もかって一度だけ来たことがあるが今回は残念ながら穂高連峰は雲に隠れて見えない。木の間越しに梓川が見えた。
    後は下りのみなので持参した膝サポーターを付けて見た。急な下りでは確かにご利益はありそうである。今日は長いこと歩いたため疲れたのでゆっくり歩いた。途中で登ってくる大勢の登山者に出会った。

徳本峠付近の登山道               ようやく徳本峠入り口に到着           河童橋から見る岳沢と穂高連峰、上部は雲
  

    傾斜が緩くなり道も広く歩き易くなってもペースが上がらない。2人連れに追い越されてようやく徳本峠入り口に出た。わずかな距離で明神に到着。ここから上高地まで大勢の観光客が散策している。最後の一時間の歩き、わずかなアップダウンでも辛く感じストックをついて歩きやっと上高地に到着。穂高連峰の上部はやはり雲に覆われていた

    後はバスと電車で松本に行き、松本から大糸線で穂高駅まで戻った。穂高からタクシーで穂高温泉郷の登山者駐車場まで行き車を回収。シャクナゲ荘で温泉に入って汗を流した後帰途に付いた。下山後、車の回収に時間とお金がかかった。蝶ヶ岳からは容易に下山出来、かつ穂高温泉郷に近い三股に下った方が良かったかも知れない。

GPSトラック
中房温泉から燕岳、大天井岳を経て常念乗越まで                  常念乗越から常念岳、蝶ヶ岳、徳本峠を経て上高地まで