八方尾根 (2150m)から 無名沢 
 

   八方尾根の丸山から無名沢を滑り降りたのは約15年前に一度あるだけである。ゴンドラとリフトを使えば、上りのハイクアップは2時間足らずで行ける。下りはやや急斜面の無名沢、緩斜面の唐松沢を滑り降りてから林道を経て二股に至る長いルートだが、下りがメインで午後2時までに戻ることが出来る。

  問題は今年3月の異常高温で雪解けが早く林道の歩きが長くなる点、唐松沢下部もデブリが多く通過がやっかいな点、南滝の通過が出来ず高巻きに苦労するかも知れない点、湯の入沢の渡渉を覚悟しなければならない点など、例年のこの時期とは異なることが予想される。

  前日の二股周辺で見た全く雪の無い状況、あるいはゲレンデ下部で雪が無いことから歩きがかなり長く苦労しそうなので、とりあえず下の樺あるいは丸山まで行ってから、無名沢を滑り降りるか、そのまま八方尾根を戻りゴンドラで下るかを決めることにした。

  結局は無名沢を滑り降りたが、やはり案じていた通り、南滝の高巻きや長い林道の歩きに苦労したが、久しぶりの無名沢滑降を楽しむことが出来て幸いであった。

  
4月3日(土) 晴時々薄曇、無風

   単独

登行高度:300 m、 滑降高度:1100 m   

リフト最上部 八方池山荘(9:45)-八方尾根2150m 地点(10:55〜11:20)―唐松沢出合(11:50)ー南滝高巻き通過(11:55〜12:25)-湯の入沢渡渉(12:45)―林道(12:55)−スキー終了(13:00)−二股(14:10)

   朝7時からホテルで朝食後、チェックアウト。駐車場に停めてある車で山スキーの準備をして車を置いて出発。歩いて5分ぐらいの白馬ゴンドラ乗り場に向かった。

  ゴンドラは8時から営業開始だが、すでにゴンドラ乗り場、その前のゴンドラチケット売り場には長蛇の列が出来ていた。全員マスクを着用している。スキーヤーの他に登山者が多いのに驚いた。

  山に上がる人は係員がチェックしていて登山届を出すように指示していた。自分も登山届を出したが、無名沢を滑るかそのまま八方尾根を滑って戻るか上に行って様子を見て決めることにした。ゲレンデ下部は全く雪が無いので八方尾根を滑り降りた時にはゴンドラに乗って下山する必要がある。とりあえず両方が出来るように午後一時までのシニア半日券を購入した。

  新型コロナウイルス対策でゴンドラは相乗りをせず、単独行の人は1人ずつ乗ったので時間がかかった。約一時間待ってゴンドラに乗った。さらにリフト2機を乗り継いで八方池山荘の前に出た。

  何人かの登山者、山スキーヤーが準備をしていた。先行する人も大勢いる。自分もスキーにシールを貼ってハイクアップを開始。雪は緩んでおり歩きやすい。先行のトレースに従い順調に進んだ。


五竜岳                  鹿島槍ヶ岳               唐松岳
  


  途中で休んでいた山スキーのグループに訪ねると彼らは無名沢を滑るという。そこで、唐松沢、林道の様子、湯の入沢の渡渉について訪ねると、林道はほとんど歩きで、沢は渡渉する必要があるとのことだった。

  緩斜面をトレースに従い進んで、丸山にあがる急斜面の手前のダケカンバの樹林がある下の樺に到着。単独行の山スキーヤーがシールを外して眼下の広い谷筋を滑り降りる準備をしていた。ここからも無名沢にエントリー出来る。


八方尾根                下の樺で休憩。ここから無名沢に     広い無名沢上部を滑る
  


  先ほど休んでいて無名沢を滑ると言っていたグループの先に進んつもりだったが、いつの間にか彼らに追い越されたようでダケカンバの樹林帯で休んでいた。

  丸山への急斜面を上がるのは止めて、自分もここからエントリーして無名沢を滑り降りることにして長い休憩を取った。行動食を取り水を飲んだ。休んでいたグループはガイドツアーのグループであった、当然ながらガイドは林道などの情報をよく知っていた。

  彼らは滑り降りる準備をして、ガイドが1人づつ滑り降りるのを確認しながら滑り降りていった。自分もシールを外してスキーの準備を終えた。

  ガイドツアーのグループ全員が滑り降りるのが時間がかかりそうだったので、途中で割り込んだ形でエントリして滑り降りたら、ガイドツアーなので間に入らないで欲しいと注意を受けた。上部のやや急斜面はザラメ雪となって非常に滑りやすい。


滑ってきた無名沢を振り返る        無名沢中間部を滑る          無名沢下部にはデブリが出てきた
   


  そこで立ち止まって全員が滑り降りるのを待って滑り降りた。彼らは途中で休憩するようだったので、無名沢を下まで滑り降りた。時々立ち止まって沢筋の雄大な景色を眺め写真を撮った。

  下るにつれて傾斜は緩くなったが雪は重くなり、足に応えるようになった。30分かかって唐松沢の出合に出た。沢の両側からは随所で小規模の雪崩があったようでデブリが堆積していた。

無名沢下部を滑る             荒松沢出合から無名沢を仰ぎ見る     唐松沢上部を見上げる
  


  デブリを避けながら唐松沢を下ると南滝に出る。そのまま滝の手前まで行き下を見ると、雪解けが進んで滝の通過は出来ないことが分かった。スキーを外しザックに付けて歩いて戻ると、先行の人が高巻きのために登った靴跡が付いていた。

  この靴跡をたどり登り切ると尾根状のやや平らな所に出た。ここからわずかな距離だが急斜面をトラバースしてから再び谷底に下る。壺足で2,3歩歩きかけたが壺足でここを進むのは危険である。

  平らな安全な所まで戻りスキーを装着して急斜面をトラバース。雪が緩んでいるので思ったより楽であるが、トラバースする一カ所の上部にクラックが入りかかっていた。ここの通過も来週は難しくなるだろう。

  急斜面を横滑りとショートターンで降りて谷底に出た。滝を下流側から眺めると雪解け水が大量に流れていた。後は谷筋の緩斜面を両側から落ちているデブリを避けながら滑り降りるのみである。左側の山側からは小規模の雪崩が起きて土砂とともに谷筋の左側に落ちていた。これは右側によけて進んだ。


南滝は雪解け水が流れていた      唐松沢下部はデブリが一杯        唐松沢下部を滑り降りる
  


  湯の入沢もスノーブリッジは無くなっていた。スキーをザックに付けて沢の浅瀬を渡渉したが、途中でスキー兼用靴に水が入ってきた。気温が高いので冷たく感じない。

  スキーを担いまま壺足で林道まで上がり、雪がつながっている林道で、ヒールフリーにしてスキーを付けて滑り降りた。しかし少し行くと雪が切れている。

  再びスキーをザックに付けて歩き出した。雪が切れている箇所が増えてきた。途中で左側の山際から雪崩と共に林道に落ちて来た土砂、岩、倒れた木々を越えて進んだ。

  下から2人連れの登山者が上がってきた。これからどこに行くのだろうか。後は長い林道歩きを続けてようやく二股に到着。橋を渡った所で、タクシーを携帯で頼んだ。タクシーは5,6分で来て、ホテルの駐車場まで行ってもらった。


林道は雪が解けていた                     二股の橋より唐松沢をみあげる
    


  車に踊り、後片付けをして帰途に着いた。

GPSトラック(赤が上り、青が下りの滑降)