前武尊山 2040m 


   前武尊山はオグナホダカスキー場のトップから一時間たらずで上ることが出来、都心から近いことも有り人気の山スキーコースである。自宅から70km、高速を使わず二時間かからず行けるので、毎年のように一度は行っている。
 
   21年前の1994年2月に前武尊山の先の剣ヶ峰の手前をトラバース中に大規模な雪崩があり死者が出る事故があった。その時、たまたま前武尊山
にいたので、あまり役に立たなかったが捜索のお手伝いをしたことがある。その捜索中に感じた何とも言えない焦り、むなしさ、自然の力の強大さを今でも剣ヶ峰の先を通る度に思い出す。

   そして今年の1月31日にまた、剣ヶ峰の先の荒砥沢右俣上部で雪崩事故があり死者が出てしまった。

  今回の雪崩事故については日本雪崩ネットワークのHPでかなり詳しい報告が出ているが、現場の様子やさらに詳しい情報を知りたくて、好天が期待された2月12日に前武尊山から荒砥沢に行ってみることにした。
 
  2月12日(金) 晴無風

単独

登行高度:205 m、 滑降高度:775 m(ゲレンデを含む) 

オグナホダカスキー場トップ(9:20)-前武尊山(9:55〜10:15)−鞍部(10:25)- 家の串手前鞍部(10:45〜11:00)-荒砥沢右俣−林道(12:10〜12:30)-スキー場(13:20)

   朝6時に自宅を出て赤城山東面道路、国道120号線を経てオグナホダカスキー場に向かった。道路上には雪がかなり残っておりスピードを落としてゆっくり進んだ。それでも2時間かからず8時10分前にスキー場に到着。山スキーの準備をして登山届を出した。今日は金曜日で人出は少ないが、快晴無風の好天気。気温はやや高めであった。

   スキー場事務所に行って先日の雪崩事故について伺うと、事故についてはスキー場は無関係で情報は全くありません。警察が対応しています。との返答であった。序でに山スキーに出掛けるなら自己責任でやってください。と言われた。

   新聞などメディアの多くはスキー場のコース外で事故などと報道しているが実体は全く異なる。日本雪崩ネットワークがそのHPで述べていることが全く正しいのにと改めて感じた。

   スキー場は8時半営業開始。リフト4機を乗り継いでゲレンデトップに出たのは9時15分。山ボードの単独行の人とほぼ同時に出発。

前武尊山                          樹林帯をハイクアップ                 ヤマトタケルの像(雪が少ない)
  

  昨日は好天で休日だったので大勢が上がったようで先行のトレースが立派についており歩き易い。休まず快調なペースで上がり、、35分で前武尊山に到着。ここも雪が少なくヤマトタケルの像は台座まで見えていた。例年と比べて1m以上積雪量が少ない。

剣ヶ峰、家の串、武尊山                 至仏山                          燧ヶ岳
  

  ほぼ同時に着いたボーダーと少し話をした。彼はこのまま12沢を滑り降りてスキー場に戻るとの事であった。少し休んでからシールを付けたまま剣ヶ峰手間の鞍部まで下った。ここから荒砥沢に下ったトレースが一本付いていた。また、剣ヶ峰の下をトラバースしたトレースが付いていた。

  雪は粘着力のあるやや重い雪であった。この雪質では雪崩れの恐れは無いだろうと判断してトレースを辿って先に進み、家の串手前の鞍部に到着。


荒砥沢上部                        家の串                          家の串手前の鞍部。トレースが2本
   

  
  昨日のトレースは家の串に上がっているものと、ここから下っているものがあった。家の串から下っているトレースは見えなかったので、西俣沢の方に降りたのであろうか?

  この鞍部から下っているトレースが2本あった。このまま下れば狭いルンゼ状の急斜面で、おそらく雪崩事故現場の近くを滑り降りることになる。

  ここから、再び剣ヶ峰をトラバースして戻ろうか、そのままトレースに従い滑り降りて雪崩事故現場の近くを滑り降りようか躊躇しながら、弱層テストをすると弱層は見られない。雪は粘着力のあるやや重い雪であった。

  まず大丈夫とここから滑ることにした。上部はさほど急では無くやや重いパウダースノーで滑り易かった。下るにつれ急になり狭いルンゼ状の谷筋となった。こんな所は小規模でも雪崩となれば逃げ道が無い。


狭くて急な谷筋の途中から見下ろす          狭くて急な谷筋を見上げる             狭くて急な谷筋を出て    
  

 
   しかし、さらに粘着力のある重い雪となった。狭い谷筋には昨日のトレースが付いておりターンがうまくいかない。お蔭で何度か転んだが、全く問題無かった。

   それでも狭い急な谷筋に長居は無用で、通り抜けたら藪、ブナ、白樺が点在するやや広い斜面に出た。雪面を見るとデブリの上にその後積もった雪が載っていた。日本雪崩ネットワークの報告からするとこの辺が雪崩事故現場であろうか?知らないが同好の方の冥福を祈った。

   昨日の2本の先行トレースに従いさらに滑り降りた。荒砥沢の1700m地点で滑りを止めて前武尊に登り返す予定であったが、重い雪で足首程度のラッセルとなる。

荒砥沢上部を見上げる                 荒砥沢上部を見上げる                荒砥沢下部の緩斜面を行く
  


 
 先行のトレースはそのまま荒砥沢を下っていた。このトレースに付いて行けば下りラッセルをせずに滑り降りることが出来る。最後の林道の歩きが長いが、このままトレースに従って滑り降りた方が楽である。荒砥沢を下まで滑り降りるのも久しぶりで良いかなと考えて先行トレース沿いに滑り降りた。

  荒砥沢下部も雪が少なく藪が多かったが滑りには問題無い。トレースのお蔭で上から1時間ちょっとで林道に着いた。ここで、昼食を取りながら休憩。陽がさして暖かい。

  ここからの林道沿いはシールを付けずヒールフリーにして歩いた。緩斜面の登りでやや苦労した所もあったが、先行トレースのお蔭で一時間足らずでスキー場に戻り下山届を出した。その後、ゲレンデスキーを少し楽しんで、花咲の湯でゆっくりした後帰宅に着いた。

GPSトラック(赤は登り、青は滑降、緑は歩き)