剣岳 2999m   

   予定では9日に平蔵谷からインディアンクロワールを剣岳まで上がり、大脱走ルンゼを滑り降りる予定であったが、悪天候で中止し小屋で停滞。一日中、雪交じりの風が強く、周囲はガスで見通しが効かなかった。

   予備日の3日目の10日に天気は持ち直したかに見えたが、晴れて風が止んでいたのは朝だけであった。その間に長次郎谷からコルまで上がったが、曇り空で雪が緩んでおらず、滑るには危険と言う判断でコルにスキーをデポし頂上まで往復した。

   頂上から滑られ無かったのは残念であったが安全には変えられない。おまけに今年は雪が少なくルンゼ内に岩が出ているので例年以上に滑りが難しい。ガイドの判断は妥当なものと納得した。微妙な天候の中で頂上まで行けたのはガイドのお蔭である。積雪期に剣岳に上がれただけでも満足。

   10日中に帰るためには室堂に4時前に戻らなければならないので早朝に出発した。最後の剣沢の登り、みくりが池への登りでは疲れたが、私よりかなり若い皆さんにどうにか歩調を合わせて行くことが出来た。ガイドの2人と同行者に感謝する。

  5月10日(日) 晴れ後曇り、風やや強し

7人 (ガイド2人、 参加者5人)  

登行高度:1955 m、 滑降高度:2175 m、 下降歩行高度:125m

剣御前小屋(4:30)-剣沢、長次郎谷出会い(5:15〜5:35)−長次郎谷コル(8:43〜9:05)-剣岳(9:40〜9:45)-長次郎谷コル(10:30〜10:55)-剣沢、長次郎谷出会い(11:25〜11:45)-剣御前小屋(13:55〜14:15)-雷鳥沢下部(14:45〜14:55)-みくりが池温泉(15:25)

  今日中に剣岳まで上がり室堂からの最終バスに間に合うように4時前に戻る長丁場の日となる。そのため、夜明けぎりぎりの4時半に出発する事になった。
前夜のうちに朝飯のおにぎりを貰い、まだ暗い4時に起きて準備してヘッドランプを付けて出発。

  雪が固くクラストした剣沢を滑り降りた。滑っている間に日の出を迎えて陽がさして来た。固い雪面が波打っていたり縦溝が入っていたりして滑りには注意が必要で足が痛くなってくる。ゆっくり滑り降りたので長次郎谷出会いまで45分かかった。

    剣沢での日の出                                剣岳。大脱走ルンゼには雪は繋がっているが、随所に岩が出ている
         


  長次郎谷出会いで朝飯のおにぎりを食べ水を飲んだ後、シールを張りハイクアップを開始。雪面は固いが傾斜が緩いので快調に進んだ。途中のデブリ帯を通り過ぎてやや傾斜がきつくなる熊岩の手前でスキーをザックに付けてアイゼンを装着した。雪面はやや硬いのでアイゼンが良く効いて歩き易い。ガイドが先頭に行ってくれるのでその踏み後を付けて上がった。

長次郎谷出会いで                      長次郎谷をハイクアップ                 長次郎谷中間部から下部を見る
    

  傾斜がだんだんきつくなって来て最後の上りでコルに到着。ここで、残りの朝飯のおにぎりを食べて休憩。微風ながら曇り空で陽がささずやや寒い。雪面もそれほど緩んでいない。ガイドの判断で頂上からのスキー滑降は中止し、コルにスキーをデポして剣岳頂上まで往復する事とした。


      コルから見る。後ろは後立山連峰                            八つ峰
          


  2グループに分かれてガイドとサブガイドとザイルでつなぎ合った。ハーネスを使いロープでつなぎ合って行動した経験はオートルート行で少ししただけであったので勝手がよく分から無かったが、サブガイドのロープ確保のお蔭で何とかなった。

ロープで確保して上がる                 ロープで確保して上がる                 急斜面の高度感抜群
   


  岩と雪の混じった急斜面を上がるのは慣れていないのでやはり怖い。ピッケルを使い、岩をつかんでどうにか上がると傾斜の緩いやや広い雪面に出てほっとした。この雪面をわずかに上がると小さな社がある剣岳頂上であった。

大脱走ルンゼのエントリーポイント            頂上の社の前で                    頂上から見る立山方面
    

  曇り空でやや寒いが風がほとんど無いのが有難い。皆で写真を取り、周囲の山々を眺めた。目の前には滑る予定であった大脱走ルンゼのエントリーポイントが見えた。途中の状況はよく分からないが、これなら条件さえ良ければ自分でも行けるかなと感じた。

下り始める                           急斜面の下り                     後ろ向きに下る
    

  寒いし先は長いので頂上にはわずかにいただけで下ることにした。急斜面の上でセルフビレイをして先行者が下りるのを待った。ロープに確保して貰いながら岩と雪の混じった急斜面を下り終えてほっとした。

恐々下る                          コルから滑り降りる                   滑り降りたコル上部を見上げる  
    


  全員がコルまで戻りスキーからシールを外して滑降開始した。上部急斜面の雪面がやや緩んでいて滑るのには丁度良い。ショートターンを繰り返しながら滑り降りると徐々に傾斜が緩くなり滑りは快適となった。


長次郎谷中間部で一休み                長次郎谷中間部を滑る               長次郎谷下部を滑る           
    


  熊岩を過ぎて中間部のデブリ帯を左右に除けながら滑り降りて剣沢に出た。ここで行動食を取りながら休憩。シールを付けて剣沢をハイクアップ。途中、条件が良ければ滑り降りた平蔵谷を見上げた。

剣沢を見上げる                      剣沢をハイクアップ                   平蔵谷を見上げる
  

  剣沢を上がるにつれて風が出て来て寒くなり、雪面も固くなった。クトー無しで上がるのが難しくなった所でスキーをザックに付けて壺足で歩きようやく剣御前小屋に到着。

  風が強く寒いので小屋に入り預けてあった荷物を回収。シールを外して約50mを歩いて下り雪が繋がっている所に出た。ここでスキーを履こうとしたがTLTのビンディングになかなかセット出来ない。焦っている間に皆さんが先に雷鳥沢を滑り降りて行った。

  スキーを履き終えるまでサブガイドが付き合ってくれた。やっとスキーを履き終えて急いで雷鳥沢を滑り降りた。下部は縦溝が沢山付いており滑りが難しくなるうえ足の筋肉に応えた。

  皆が滑り降りてシールを付けている所に追いついた。自分のすぐにシールを付けて先行者のトレースに従いハイクアップ。疲れた所での上りはつらい。ようやくみくりが池温泉に到着。

  全員でソフトアイスクリームを食べて疲れを癒しながら歓談。自分はここで泊まることにしたが、他の方は全員今日中に帰るとのことで室堂に向かった。ガイドと同行者の皆さんにお礼の挨拶をして分かれて今回の剣岳ガイドツアーは終了した。

  後はみくりが池温泉で温泉とビールで一日の疲れを癒した。みくりが池温泉は温泉、夕食ともに素晴らしかった。


 
GPSトラック (登りは赤、下りの滑りは青、下りの歩きも赤、早朝の剣沢滑降の一部は電池切れで消えている)