常念岳 2857m
常念岳は無雪期に2度訪れたことがあるが、積雪期に山スキーで行ったことは無かった。日本100名山の一つで、ピラミダルな山の姿が特徴的で一度は山スキーで訪れて見たかった山である。
前日の蝶ヶ岳に引き継いで、登山口の一ノ沢から上がり、営業を始めた4月26日に常念小屋に泊まり周辺の沢筋をスキーで滑る計画を立てた。
好天気に恵まれたが、気温が高く夏のような陽気であった。常念岳周辺も雪解けが早く積雪量は少なかった。常念小屋の人の話では例年と比べて雪解けが一か月くらい早いとの事であった。そこで、滑る予定であった沢筋を一部取り止めにした。しかし、常念岳直下から滑り落ちる南東の谷筋は雪が繋がっており、急斜面の滑降を楽しむことが出来た。
登山者は結構大勢いたが山スキーをやったのは自分だけであった。前日に滑ったトレースが前常念岳の上から2本付いていただけであった。常念岳の滑りは面白いのだが、アプローチが長いのが難点であると思った。
4月26日(日) 晴、風弱し
単独
登行高度:1380 m、 滑降高度:550 m、 下降歩行高度:30m
一ノ沢登山口(5:50)-常念乗越(常念小屋)(11:00〜11:50)−常念岳(13:20〜13:50)-頂上直下(14:00〜14:10)-谷筋2270m地点(15:05〜15:20)-常念小屋(16:10)
一ノ沢の登山口の手前の道路際のオープンスペースで車中泊。朝四時半に起きて簡単な朝食を取り用意してスキーをザックに付け兼用靴を担いでトレッキングシューズで出発。登山者も何人か上がって行った。
一ノ沢沿いの登山道はだんだん歩きづらくなって来た。暑くなってきたのですぐ上着を脱いだ。小さな沢を二,三度越えて進み雪が出て来た1450m地点で兼用靴に履き替えた。先行の登山者のトレースに従って樹林帯の中の登山道沿いを上がった。 雪は踏みかたまれているが、気温が高いので適当に緩んでいて歩き易い。
陽がさしてきて暑くなりシャツ一枚となった。標高1900mを越えたあたりでシール歩行に切り替えた。左側の前常念岳から谷筋を滑り降りてきたトレース2本が付いていた。前日のものだろうが、斜度もほどほどで広い斜面で雪が繋がっており快適そうであった。
前常念岳からの谷筋、スキーのトレースが付いていた
さらに進むと左側の谷筋を上がっている踏み後が付いていた。しかし、多くの踏み後が付いている登山道沿いに進んだ。途中で単独行の登山者に追い越された。沢沿いの登山道はだんだん急斜面になって来た、シール歩行が難しくなった所で再びスキーをザックに着けて担いで壺足で上がった。
左側の谷筋を上がる 右側の横通岳の方に向かう谷筋
ここの急斜面の上りはつらかった。それでも単独行の登山者一人を追い越して上がり常念乗越に到着。常念小屋に宿泊をお願いした。小屋で無料の越冬缶ビールを貰った。小屋の前のベンチに座って周囲の山々を見ながら缶ビールを飲んだ。うまい。
上がって来た一ノ沢の最上部 世話になった常念小屋 常念乗越、横通岳、東天井岳
ゆっくり休んだ後は不要な荷物を小屋に預けて、スキーをザックに付け兼用靴を担いでトレッキングシューズで常念岳に向かった。大小の岩がごろごろしている登山道は歩きにくい。
常念岳、雪が少ない
急な斜面を上がり切り少し平坦になった後、僅かな急な登りで常念岳の頂上に到着。昨日上がった蝶ヶ岳が左前方に見える。
蝶ヶ岳方面 大天井岳、燕岳方面 焼岳、乗鞍岳方面
槍ヶ岳、穂高岳など正面に見えるの山々の眺望が素晴らしい。頂上にいた単独の登山者と話をしてゆっくりした。
穂高岳をバックに 槍ヶ岳、大バミ岳、中岳 穂高連峰。ここも雪が少ない
滑る予定の北東斜面は雪が少ないし、下まで雪が繋がっていない。仕方が無いので頂上から雪のある所まで石ころやハイ松のあるだ斜面を下った。スキーを付けて滑降開始した。雪面が予想に反してやや硬い。ターンするとガリガリ音がする。
2,3度ターンした時エッジングが甘くて転んで滑落しかけた。急いで体勢を立て直してスキーで止めることが出来て事無きを得た。以後慎重に滑り降りて雪が切れた所で、スキーを外しザックに付けてハイ松と石ころの間を次の雪のある所まで歩いて下った。
雪が切れた雪渓を滑る 槍ヶ岳を見ながら急斜面を滑る 岩がごろごろしている谷筋を下る
ここを少し滑るとまた雪が切れていて次の雪のある所まで歩いて下り再びスキーを付けて滑降。下の状況がよく分からないまま谷状の所を滑り降りたら急斜面でその先は大小の岩がごろごろごろしている。急斜面の雪のある所を横滑りで降りて石のごろごろごろしている所をスキーを担いで歩いて下った。
最後は2m位の高さの滝状の所に出た。2m位の岩壁の途中に出っ張りが2か所あった。ストックを投げ下ろし、岩の出っ張りに足をかけて降りたが最後は足が20cm位届かない。そこを飛び降りたが転んでしまい軽い打撲傷。痛みが引くまでしばらく待ってから次の雪のある所まで歩いてスキーを付け再度滑降開始した。
下部になるとダケカンバの林となり藪がうるさなって来たが、何とか滑降し谷筋に出た。雪が繋がっていれば何という事ない快適斜面であろうが、苦労して下り一時間近くかかってしまった。
沢筋は雪が切れて沢の水が流れている箇所が何か所もあり高巻きをしなければならない所もあった。途中から昨日のものと思われる壺足のトレースがあったのでそれについて上がった。どうやら横通岳の手前から北西斜面を下りた人がいたようだ。
この登りも予想以上に時間がかかり疲れてようやく常念小屋に到着。再び無料の越冬ビールを貰い疲れを癒した。本日の宿泊者は11人。スキーを持っていたのは一人だけであった。
4月27日(月) 晴、風弱し
単独
登行高度:300 m、 滑降高度:870 m、 下降歩行高度:600m
常念小屋(7:50)-常念岳手前2765m地点(9:15〜9:30)-スキー滑降終了1900m地点(10:00〜10:10)-一ノ沢登山口(12:20)
当初の予定では、朝早く出て稜線上を東天井岳、あるいは天井岳まで行き一ノ俣谷あるいは二ノ俣谷を滑る予定であったが、雪が少なく沢筋の下部の状態が心配であったので取り止めて、常念岳に上がってから下山ることにした。
雪が緩んでくるのを待つため、他の登山者より遅く常念小屋を7時50分に出発して常念岳を上がった。しかし、気温が高いし、滑る予定の南東の沢沿いは朝日が当って雪は緩んでいる。他の登山者同様もっと早く出発した方が良かったかも知れない。
スキーをザックに付け、兼用靴を担いでトレッキングシューズで岩の多い登山道をゆっくりと上がった。途中で常念岳に上がり降りてきた登山者に何回も出会った。
右手の北東斜面を見ると昨日滑ったトレースが見える。ゆっくりと岩の多い急斜面の登山道を上がり、一時間以上かかってやっと頂上手前の平坦な所に出た。当初は前常念岳の近くまで行き稜線から前日のトレースがあった沢筋を滑ろうかと思っていた。
昨日滑った北東斜面、向こうに槍ヶ岳、大天井岳が見える
しかし、常念岳手前から落ちている南東斜面の急な谷筋も下まで雪が繋がっているようであった。そこで、これ以上行くのは止めてここから滑ることにした。上から見ると結構急斜面だが、雪が緩んでいて滑落の危険は無さそうである。
常念岳南東谷筋斜面を上から見る 上部を滑った後、振り返る 常念乗越を左側に見て急斜面を滑る
スキーを付けて滑降開始。当初はやや緊張してターンしたが快適急斜面であった。、時々止まりながら適当にショートターンを繰り返しながら滑り降りた。ゆっくり降りても滑りは早い。下部になると斜度は緩み登りに取った登山道に合した。
急斜面を滑り降りて緩斜面となり登山道と合する
登山道沿いに滑り降りたがスキーで滑ることが出来たのは標高1900m地点までであった。これ以後はスキーを担いで兼用靴で雪の上を歩いた。雪が消えた1450m地点でトレッキングシューズに履き替えて登山道を歩き小さな沢を2,3度越えて一ノ沢の登山口に到着。
日帰り温泉のシャクナゲ荘で二日間の汗を流した。その後、山岳美術館、絵本館、ちひろ美術館を訪れて見学後、帰途に付いた。
GPSトラック (登りは赤、下りの滑りは青、下りの歩きも赤))