朝日岳 1945m (土合から白毛門を経て朝日岳に上がりナルミズ沢を滑る。さらに、布引尾根に上がり宝川温泉まで) 

  朝日岳は湯檜曽川を挟んで谷川岳の向かい側にある。無雪期には一度訪れたことがあるが、群馬県にあるので一度は山スキーで行って見たかった山でもある。アクセスが長いので、日帰りではかなりきつい。

  土合から入り、白毛門、笠ヶ岳を経て朝日岳まで上がり、ナルミズ沢、宝川を広河原まで滑り降りる。さらに布引尾根まで上がり宝川沿いに下り宝川温泉までワンデーで行く計画を立てた。結果的には当初の予定通りこのルートで走破することが出来たが、重い雪が多くて13時間近くかかり疲れた。

  確実に好天気が期待された土曜日に行くことにして登山届を出した。その前の火曜日、水曜日にかけて大雪が降っている。それ以後は気温が上がったので、雪は落ちるものは落ち、さらに雪は締まって来て雪崩の危険性は低くなっているだろうと予想した。

  しかし、気温が高くなるので雪は重くなり、登りも滑降もきつくなる可能性がある。予定通りに行けそうも無かったら、途中の笠ヶ岳付近から赤倉沢を滑り土合まで戻ることにした。

   問題は宝川温泉に車を停めて置き土合まで行くのにどうするかである。車2台で行くと都合が良い。時々、山スキーに同行するSさんに天気が良さそうなので行きませんか?と連絡したが今回は都合が悪いとの事で単独で行くことにした。

   前日の金曜日の昼過ぎに自宅を出てまず宝川温泉に行き除雪終了地点の駐車場に車を停めた。山スキーの準備をして宝川温泉から水上行のバスに乗った。途中の大穴で降り、30分待って谷川岳ロープウェー行のバスに乗り土合橋で降りた。すぐ目の前にある天神ロッジに宿泊した。白毛門登山口もすぐである。

 
  3月28日(土) 快晴無風

単独  

登行高度:1670 m、 滑降高度:1660 m 

土合橋(5:05)-白毛門(9:45〜10:05)−鞍部(10:10)-笠ヶ岳(11:05)-1934m峰(11:50)-朝日岳(12:55〜13:27)-ナルミズ沢左俣-ナルミズ沢合流点(13:48)-広河原(14:40〜14:55)-布引尾根1520m地点(16:12〜16:38)-宝川林道(17:02)-宝川温泉(17:57)

   
  朝4時半に起床、簡単な朝食を取り夜が明けだした早朝に出発。スキーを担いで壺足で進んだ。白毛門登山口の道路沿いの雪壁を上がった。昨日のものと思われるトレースが沢山付いていた。まだ雪は締まっていて固く歩き易い。

  沢に架かる橋が雪に覆われている。橋に降りる雪壁が急で恐々と橋を渡った。橋を渡るとすぐに急斜面の尾根筋になる。ここで先行の単独山スキーヤーにお目にかかった。なんと2週間前にも谷川岳でお目にかかり少し話をした佐藤さんであった。トレースが付いている上に佐藤さんが先に行ってくれるので順調に進んだ。しかし、早朝で雪が締まっているとは言え気温が高いので所々で足が潜ってしまう。

  途中で単独行の登山者が下りてきた。この方はまだ暗い2時に出発して白毛門まで登って帰る途中だとのことであった。他人のことは言えないが、物好きな人がいるものだと感心した。

  松の木沢の頭までほぼ3時間で上がり、予定通りのペースであった。目の前には谷川岳が一望できる。松の木沢の頭からもしばらくは壺足のままで上がったが、急斜面の手前でアイゼンを装着した。

谷川岳                            天神平                          これから上がる白毛門
  

  トレースに付いて急斜面を上がっている所で、先行の佐藤さんが上から左に行った方が良いですよと声をかけてくれた。急斜面な上に少しデブリが落ちていて踏み後が見づらくなっていた。雪がやや柔らかい。

  突然、片足がシュルンドに入ってしまった。シュルンドが新雪に覆われていてよく分からなかった。ここで初めて左に行った方が良いですよの意味が分かった。片足を抜け出すのにしばらく時間がかかった。ようやく片足を抜け出して2,3歩左手に進むと、また、片足をシュルンドに入れてしまった。今度は大したことが無く抜け出したが、注意が必要。ストックで前方の雪を確認しながら左手に進んだ。ようやく先行の佐藤さんが左手に進んだトレースが出て来た。この間にかなり時間がかかってしまった。

  トレースに従い左手に回り込みながら尾根筋の上に上がった。後は尾根筋を上がりようやく白毛門の山頂に到着。

白毛門山頂                        白毛門から見る笠ヶ岳と朝日岳           白毛門から見る武尊山
  


先行の佐藤さんがいた。ここで行動食を取り水を飲みしばらく休んでいるうち、佐藤さんは笠ヶ岳の鞍部まで滑り降りて行った。

           白毛門から見る上越の山、大源太山                白毛門から見る赤城山
               


  自分もアイゼンを外しスキーを付けて鞍部までやや硬い斜面を滑り降りた。下りは早い。しばらく、先行の踏み後に付いて壺足で上がったが、雪が軟らかくなって来て歩きづらい。この斜面ではシール歩行の方が楽なのでシールを装着してハイクアップ。笠ヶ岳の手前の斜面が急になる所から右手に回り込んで山頂を踏まずに尾根筋に上がった。避難小屋が目の前にあった。

  しばらくシール歩行を続けたが、尾根筋はアップダウンがある上に波打っていてシール歩行がしづらくなったので、再びスキーを担いで先行の踏み後に従い進んだ。はるか先に朝日岳が見える。小烏帽子を左側から撒いて大烏帽子をやっとのことで越えて進んだ。

大烏帽子(1934m峰)から見る朝日岳        大石沢、遠方は武尊山、燧ヶ岳、平ヶ岳       大烏帽子(1934m峰)
    


  最後の一踏ん張りでようやく朝日岳山頂に到着。先行の踏み後を付けさせてもらったお蔭で何とか来られたが疲れた。広い山頂で休んでいた佐藤さんと話をした。2週間前の谷川岳だけで無く、昨年4月に行った笹ヶ峰からの火打山、あるいは天狗原山、金山でもお目にかかり話をした事が分かった。狭い山スキー界なので山行中にたびたびお目にかかることは有るが奇遇に少しびっくりした。


朝日岳山頂で                       ジャンクションピークが直ぐ目の前        武尊山と宝台樹スキー場。奥に日光白根山
  


  ここで、昼食を取りながら長い休憩。その間に佐藤さんは湯檜曽川方向にゴボウ沢方面に滑り降りて行った。たった一人の山頂。風も無く晴天で辺りの山々の眺望が素晴らしい。


朝日岳から見る芝倉沢、一ノ倉岳、茂倉岳      越後三山、手前は大烏帽子山            谷川岳と大倉沢
  


  ゆっくり休憩後は山頂から右前方に広い緩斜面を滑り降りた。雪面はやや硬く波打っていた。台地上の斜面を下りるとやや急斜面となる。広い無立木のナルミズ沢左俣が拡がっていた。上部のやや急斜面はプチ最中雪状態で雪崩れの恐れは無いが、疲れた身体でターンがやや困難。足が取られて2度ほど転び掛けたが最中雪状態で滑落することは無い。

  上部を降りると傾斜は緩くなり雪は緩んでいて重いが滑り易くなった。下からシール歩行で上がって来る単独行の人にお目にかかった。早朝、宝川温泉から大烏帽子山まで上がりナルミズ沢を滑った後朝日岳を目指して上がっているとの事、凄い人がいるものである。

ナルミズ沢左俣上部から中間部を滑る        ナルミズ沢左俣をハイクアップする宮田さん    ナルミズ沢左俣を上から見る
  


  中間部は雪が重くターンは疲れるが滑り易い。適当にターンを繰り返しながら長いナルミズ沢左俣を右俣合流点まで滑り降りた。後は宝川沿いの緩斜面の滑りとなった。ぐちゃぐちゃの重い雪で滑らない。暑くなってきてシャツ一枚となっった。殆ど下りの歩きで予想以上に時間がかかり疲れた。ようやくウツボギ沢の出合いとなる広河原に出た。下部になると先行のトレースがあったが、ウツボギ沢を登り返していた。

           ナルミズ沢下部の滑り                    宝川沿いの緩斜面を行く
              


  広河原で水を飲みしばらく休憩。シールを付けて傾斜の緩い谷筋をハイクアップ。ぐちゃぐちゃの重い雪で疲れた身体にはつらい登りであった。あと少しで尾根筋で、先ほど朝日岳をハイクアップしていた人が追い付いてきて、今度は自分が先行しますと言って先に行かれた。やはり、他人のトレースに付いて行く方が楽である。

  やっとのことで布引尾根の1520m地点に到着。先ほどの人が休んでいた。休憩し行動食を取りながら話をすると、お名前を良く存じあげていた熊谷トレッキングクラブの宮田さんであった。

布引尾根から見る武尊山                  布引尾根                         布引山
  

  宮田さんは尾根筋の疎林帯を滑り降りて行った。自分もシールを外して滑降開始。適当にターンしながら先行のトレースに付いて滑り降りたが、重い雪で疲れた足には応える。それでも滑りは楽しい。短時間で林道まで下りてしまった。

疎林の布引尾根を下る                  先行者のトレースの隣をターンして下る       緩斜面の林道を下る      
  


  後は緩斜面の林道上での滑り。スノーシューのトレースが一杯付いていて雪は締まって滑り易くなっていた。先行のトレースに付いて緩斜面を滑り降りた。下部になると歩きが多くなる。

  入り口には雪が一杯のトンネルをスキーを外して越え、さらに滑りと歩きを交えて下りようやく宝川温泉の除雪終了地点の駐車場に到着した。未だ明るい6時前であったが、約13時間かかったことになる。雪の状態が良く無かったので時間がかかったが、何とか無事に走破出来て良かった。

  駐車場でしばらく宮田さんと話をしてから、疲れたので湯の小屋温泉まで行き宿泊して温泉に浸かり、翌朝帰宅した。

GPSトラック(赤が上り、青が下り)