柄沢山 1900 m

   柄沢山は巻機山の南にある山で、巻機山と同じく清水集落から山スキーで日帰りでいける。山の雑誌「岳人」で山スキーのルートとして紹介されている。これまで行ったことが無かったので一度は行って見たかった山である。

   4月12、13日の土曜日、日曜日は好天が期待されたので、柄沢山と巻機山に行く計画を立てた。12日の柄沢山はこれまで行ったことが無かったので時間に余裕を持たせて朝早く出発することにして、前夜のうちに清水集落の国道除雪終了地点まで行き車中泊をした。

   幸い天気に恵まれ、柄沢山の山スキーを楽しむことが出来た。柄沢川源頭部の広い斜面、あるいは反対側のトゴトウシ沢右俣の広いカール状の斜面は上から下まで見降ろすことが出来、目の前の山々を見ながらの滑りが素晴らしい。いずれも源頭部はかなりの急斜面だが気温が上がったため緩んだザラメ雪の滑りが快適であった。
   下山した時には道路除雪終了地点付近に駐車していた車は10台近くあり、柄沢山に入山した山スキーヤーはかなりいたようであった。しかし、隣の巻機山よりずっと少ない。早朝出たため、途中で会った人はおらず静かな山行を楽しめた。「岳人」で特に紹介する価値のあるルートであった。

  
4月12日(土) 快晴、稜線上でやや風あり

   単独

登行高度:1535 m、 滑降高度:1535 m 

清水道路除雪終了地点(5:45)-柄沢川右俣分岐点1055m地点(7:20)-柄沢山西尾根1290m地点(8:00)-柄沢山(10:20〜10:40)-1809m峰手前鞍部(10:50)−トゴトウジ沢1560m地点(11:05〜11:50)-1809m峰手前鞍部(12:30〜12:40)−清水道路除雪終了地点(13:35)

   

  朝5時00分に起床、簡単な朝食を済ませて山スキーの準備をして出発。今回は新しいスキーi板(Dynafit Nangabarbat)、自分で取りつけた締め具(TLT Radical)、新しいシールを使うのでその準備、調整に少し時間がかかった。片方の締め具をややずれて付けてしまったようだが使用するには問題無い。

  雪に覆われた道路からすぐ柄沢川沿いにある林道沿いのルートに入った。広い川床には杉林、続いてブナの疎林が点在する雰囲気の良い緩斜面が続いていた。前夜から早朝の気温が低かったので雪面はやや硬いが、かえってシール歩行が順調に進んだ。前日のものと思われるトレースが一本うっすらと付いていた。

  最初の堰堤を通過し、2番目の堰堤を左側を撒いて越えて沢底に下りてシール歩行を続けた。しばらく行くと次第に傾斜は急になって来た。沢が2つに分かれる分岐点で前日のトレースは右側の尾根筋を上がっていた。


平坦な柄沢川下部を行く                  上の堰堤を左側から超える               沢の分岐点から右側の沢を上がる
    


  雪面がまだ固いのでシール歩行で急な尾根に上がる事が困難だし、スキーアイゼンも持っていなかったので傾斜が緩い右側の沢筋を進んだ。 しかし、この沢筋もしばらく行くと急になりシール歩行で登ろうとするとスリップするようになってしまった。ここの分岐点では「岳人」や2,3のインターネットのサイトで紹介されていたより傾斜が緩い左側の沢筋を取るべきであった。

  シール歩行をあきらめてスキーをザックに付けて壺足で尾根筋を直登することにした。暑くなってきてアウターを脱いだ。雪面はやや緩んでいてアイゼンを付けないでも何とか上がれる。結局持参したアイゼンを使うこと無くキックステップを併用して急な尾根筋を上がることが出来て、柄沢山に至る西尾根の稜線上に出た。

  左手には右側に大きな雪庇が出ている西尾根が柄沢山に向かって上がっていた。正面には大源太山から谷川岳に至る連峰、仙の倉山、朝日岳、苗場山、神楽峰などが一望出来た。稜線上はやや風が吹いており寒くなったのでアウターをきた。

柄沢山に至る西尾根                    西尾根稜線上から見る苗場山、神楽峰      ブッシュに覆われた最後の登り
    

    
  雪の山々の眺望を楽しんだ後は、傾斜が緩いが雪面がやや固い西尾根を柄沢山に向かってシール歩行。出来るだけ右側の雪庇を避けてブッシュや木が生えている左側を進んだ。しばらく行くと傾斜は急になって来た、おまけに斜面が波打ってきてシール歩行がつらくなったので、再びスキーをザックに付けて壺足で歩いた。

   傾斜が緩くなるとシール歩行、急になるとスキーを担いだ壺足での登りを2,3度繰り返して上がった。最後にブッシュで覆われたやや急な峰を上がり切ると雪に覆われた緩斜面となりシール歩行に切り替えた。

   少し行くと柄沢山の山頂に到着。広い山頂付近は平坦でどこが山頂か分からない。西尾根の稜線沿いは頂上方向が近くに見えたが歩きは長かった。標高差600m以上あり、登りに2時間以上かかったがそれほど疲れは感じなかった。

   平坦な頂上からの眺望は素晴らしい。たった一人の眺望を楽しんだ。大烏帽子山から布引山に至る稜線。その右手には朝日岳、笠ヶ岳、大源太山から谷川岳連峰、仙の倉山、さらには苗場山から神楽峰。

大烏帽子山から布引山に足る稜線          大烏帽子山、朝日岳、笠ヶ岳、白毛門          谷川岳連峰、仙の倉山
    


   眼を北側に向けると巻機山からさらに越後駒ヶ岳。東側には平ヶ岳から尾瀬の山々、さらには上州武尊山。周囲一望、雪山のオンパレードである。スキーで登ったことがある山々を見入った。

巻機山                            越後駒ヶ岳                         柄沢山山頂付近の雪庇
    


   頂上付近はやや風が強く寒い。シールを外して右側の雪庇を避けて尾根筋の左側を滑り降りた。雪が緩んできたが未だ雪面は固い緩斜面の尾根筋を滑り降りると1809m峰の手前の鞍部に出た。

  右側のトゴトウジ沢右俣の源頭部はカール状の広い斜面が拡がっていて、正面には尾瀬の山々が一望できる。上部はかなりの急斜面であるが、東面に面しているので雪が緩んでいて滑り易いザラメ雪となっていた。まだ時間は早い。トゴトウジ沢の源頭部を滑り降りた。急斜面をショートターンで標高差230mを滑り降りた。

   トゴトウジ沢右俣上部から見る。後ろは尾瀬の山                 滑り降りたトゴトウジ沢源頭部を仰ぎ見る
       


  さらに滑り降りたいところだが、登り返しがきついので傾斜が緩くなった所で滑降停止。風が無く陽が照って暑い。アウターを脱いで昼食の大休止。お湯を沸かしカップラーメンを食べた。


     トゴトウジ沢をハイクアップ。後ろは平ヶ岳                      鞍部から見る柄沢山
        


  休憩後はシールを付けて鞍部を目指してハイクアップを開始。急斜面をジグを切りながら上がったが、雪が緩んでいて登り易い。再び鞍部に戻った所で少し休憩。尾根筋を柄沢山に上がっているグループが遠くに見えた。

  柄沢川源頭部は急で上部が見え無かったので少し右手の尾根筋に向かいシールを外して滑降を開始。尾根筋からクラックが入った箇所を避けてトラバースして谷筋の源頭部に入った。上部は急斜面だがこちらも雪が緩んだザラメ雪で滑りが快適。柄沢川源頭部の上から下まで見下ろせる快適ルートである。すでに本日滑り降りたトレースが一本付いていた。

   柄沢川源頭部から下部を見下ろす                         滑り降りてきた柄沢川源頭部を仰ぎ見る
      


  ショートターンを繰り返して広い急斜面を滑り降りた。下るにつれて斜度はだんだん落ちてきて、登りで取った分岐点を過ぎると緩斜面となった。適当にターンしながら滑り降りて堰堤に達した。堰堤を少し上がり越えてからさらに緩斜面の滑りは続いて道路際の除雪終了地点に到着。

  柄沢川中間部を滑る                                 柄沢川中間部から下部を見る
     

  滑りを楽しみながらゆっくり降りてきたつもりだったが、上の鞍部から一時間もかからなかった。道路際には10台近い車が停まっていた。途中誰にも会わなかったが、結構大勢の人が入山していたことが分かる。スキーを片付けている間に、テレマークの4人連れが下りてきた。


  この後、翌日の巻機山山行のため、車を移動して清水集落の下にある民宿旅館運天に向かい宿泊をお願いした。運天には40〜45年前に3度くらい、10〜12年前に一度、2,3年前に一度、巻機山への山スキーのため訪れて泊まったことがある。

   運天に「たった一人の叛乱」と言う本のコピーが置いてあったので読んでみた。運天のことおよび20〜30年前にあった清水集落、巻機山周辺でのスキー場開発計画のいきさつが書かれていた。20〜30年前には巻機山に行って無かったので、そのようなスキー場開発計画などがあったことを知らなかった。

   運天のご主人であるとうちゃんの一人の反対がきっかけになり大規模スキー場開発を止めることが出来たとの事であった。バブルのころは観光開発と称して大規模開発された所が多いがその後殆ど頓挫している。支援者の助けもあったが、とうちゃんの先見の明があり、巻機山の自然が守られて良かったと読んで思った。

GPSトラック