尾瀬西山 1898m


   尾瀬西山は尾瀬岩鞍スキー場のゲレンデトップから容易に頂上に達することが出来るが一般にはあまり知られていない。12月19日の夕方、RSSAのSさんから電話があり、Mさんと尾瀬西山に明日出掛けるが一緒に行きませんかとの電話があった。シーズン初めの山スキーはまだ行って無かったし、準備もしていなかったが、ここ数年何回か山スキーに同行しているSさん、Mさんとならと、2つ返事で行くことにして急遽、装備、用具を準備した。尾瀬岩倉スキー場の積雪量を調べると140cmとある。下部の沢筋は雪が完全に埋まっていない可能性があるが、山スキーは可能であろう。

   しかし、地図、磁石、防寒用の帽子など、予備のメガネ、メガネ止め紐などいくつか忘れてしまった。GPSは持参したが,地図と磁石を忘れたのは致命的であった。尾瀬西山には過去何度か行っており問題点が無かったので、気の緩みがあり地図の確認もしなかった。

   登りは良かったが、下りで尾根筋を通りケヤキ沢に下りるつもりであった。地図を確認せず、右の俣沢を以前に通った事のある江戸沢と勘違いするルートミスを犯した。かなり下ってから間違ったことに気が付いて引き返したが、時間的に遅くなり暗くなる直前に途中でビバーク。幸い3人ともいざと言う時のためにツエルト、ガスボンベ、バーナーなど
ビバークに必要な装備一式を持っていたので、寒くて眠かったが、問題無くビバークして翌朝明るくなってから行動を開始した。

  山中で携帯電話が通じなかったので連絡が取れなかった。結局、尾根筋に上がってから電話が通じたが、その時には既に、警察は遭難事故として家族や関係者に連絡し、山岳救助隊が出動した後だった。

   登山届を出したスキー場では予定の下山時間である昨日中に戻らなかったので心配されて警察に届けられた。我々3人は安全のためビバークをして問題無く戻って来たと言う認識であったが、警察やスキー場関係者は遭難事故と認識されて対応を取られた。この認識の差に早く気付くべきであった。

   以前は登山届を出していても、家族などが救助要請をしてから救助活動が行われる事が多かったが、山岳事故が多発している現状では迅速な対応が求められていることを再認識した。大分昔のことになるが、今回より厳しいビバークをした事もあるが、遭難事故として取り扱われることは無かった。

   容易に行けたと言う記憶だけで準備不足の反省点の多い山スキー行であった。山スキーでは下りは早いので、GPS,地図、磁石による現在地、進行方向、目的地のチェックをたびたびやらねばならないという事を忘れていた。私のミスが基でSさん、Mさんにも申し訳ないことをしてしまった。

  警察やスキー場関係者さらには家族、RSSA関係者に多大な心配と迷惑をかけさせてしまい、まことに申し訳なく深くお詫びする。

   
  12月20日(土) 曇り、のち小雨、ミゾレ

3人 (RSSAのSさん、Mさんと)
登行高度:250 m、 滑降高度:400 m 

スキー場ゲレンデトップ(10:50)-西山(12:55〜13:15)−尾根筋滑降開始点(13:45)-右の俣沢1510m引き返し地点(15:30)-ビバーク1550m地点(17:00)

   朝スキーなど用具を車に載せて、6時半過ぎに自宅を出発。赤城山東面道路を経て尾瀬岩鞍スキー場に8時半に到着。山スキーの用意をして9時前にチケット売り場に行った。集合時間は9時であったが、3人が集まったのは10時近かった。ゴンドラ券とリフト券2枚を買った。

   ゴンドラの終点でスキーにシールを付けて歩き出したのは10時50分。雪はやや重いパウダースノーで足首から膝下程度のラッセル。尾根筋の登高路は結構アップダウンがある。ブナの林を過ぎると、シラビソの林となる。2時間かかって西山頂上に到着。

                西山頂上から見る。

                  手前の沢は金井沢。向うに日光白根山と皇海山
              

        燧ヶ岳                                 木の間越しに至仏山
             


  少し休んで、西栗沢方面を上から偵察。シールのまま引き返すことにした。尾根筋をしばらくシールを付けたまま下ッた後、シールを外して滑り出した。しばらく左手にトラバース気味に滑り降りて西南方向の尾根筋を下りる予定であったが、西方向に降りてしまった。以前滑り降りたケヤキ沢と雰囲気が似ており、正面に武尊山が見えていたのでそのまま滑り降りてしまったのが最大の間違いであった。途中で地図と磁石できちんと確認すべきであったが持参していなかった。

  スキーは下りが速いので、そのまま1530m付近まで下りてしまった。それでも、ここでゆっくりと現在位置と進行方向を確認すれば、江戸沢源頭に向かいその日のうちに江戸沢を下る選択も出来たが、焦っていたせいもありおかしいなと思いながら右の俣沢沿いに進んでしまった。

  
後ろからSさんが反対方向に行っているのでないかとGPSと地図を持って来られた。やはり間違っていた。シールを張って急いで引き返すことにしたが、下ってきたトレースを上がるのは大変である。おまけにシールに雪が付いていてすぐ外れてしまう。結局、持参したテープと、細引き紐で何とかしのいだ。しかしMさんはシールの片方を紛失してしまった。私はシールが付いていたので少し探しに戻ったが、無かったので引き返した。後から考えるとさらに先まで行って探してくるべきだった。Mさんは失ったシールの片方にクトーを付けて上がったがやはり時間がかかる。

  自分も時々、TLTのビンディングが外れて時間を食ってしまった。ビンディングに雪が付着するとはずれ安くなっていることを忘れていた。おまけに途中でメガネを木の枝に引っ掛けて落としてしまった。雪の中に落ちたメガネを探すのにも少し時間がかかった。

   引き返す途中でいろいろあり、今日中に戻るのは難しくなった。そうとなったら明るいうちにビバークの用意をしなければならない。先行していたSさんがブナの大木の前で待っていた。

   急いでスコップを出して雪を掘り3人分のスペースを作った。周りに掘った雪を積み重ねて壁とした。上部はプローブを梁として使いツエルト2枚で屋根と壁にし端はストックとスキーで固定した。前面は隙間が空いていて寒いのでもう一枚のツエルトで覆った。3人とも持参した空気座布団を下にひいて座り身を寄せ合ってツエルト内で夜を明かした。

   小雨、続いてミゾレ、さらに湿った雪が降ったが大したことは無かったが濡れてしまった。幸い気温はそれほど下がらかったがやはり寒い。時々Sさんがバーナーの火をつけて暖を取った。結局持参したガスボンベ2本を使い切ったが、狭いツエルト内ではバーナーを付けるとわずかな火でも暖かくなる事を実感した。また、レスキューシートを拡げ腰から下にかけたが防寒に役立った。


12月21日(日) 曇り時々晴

ビバーク1550m地点(7:00)- 尾根筋1785m地点(9:10〜9:40)-スキー場手前尾根筋1775m地点(11:45〜11:55)-スキー場手前尾根筋1800m地点(13:10)-スキー場トップ(13:35)-ゲレンデ下部(13:55)


   夜明けは6時頃だが、雨が上がり切っていなかったのと寒かったので起き上がって行動するのが遅れた。ツエルトやいろいろのもを撤収して出発したのは7時頃であった。3人とも元気で全く問題無かった。Sさんが先行して尾根筋まで上がって行った。Mさんはシールの片方が無くてクトーで上がるので遅くなってしまう。

  Sさんに続いて尾根筋に上がったのは9時頃。携帯電話が通じる位置に来て携帯電話が鳴った。あわてて取ると妻からの電話で無事だったのとの喜んだ声。我々が遭難したので警察が捜索活動を始めているので早く警察に電話するように言われた。妻は警察にもすぐに電話連絡したので、警察からの電話が直ぐに来た。3人とも無事で自力で下山出来ますので救助隊の必要はありませんと答えたが、すでに救助隊は出動してそちらに向かっているとのことで、GPSの現在位置を聞かれた。

  程なくして救助隊の方がやって来られた。救助隊は遅れているMさんの所に向かいしばらくして一緒にやって来られた。その後、当初は救助隊4人の方と一緒に下山したが、救助隊の方は若くてスノーシューであり我々は山スキーでアップダウンの尾根道ではペースが異なる。別行動で降りて下のスキー場の事務所でお会いしますからと離れた。

  しかし、途中の尾根で少し滑り降りた所で戻ったが、この戻りのわずか20,30mの標高差で一時間かかり、スキー場の事務所に戻るのが遅れてしまい、救助隊の方にさらに心配をかけさせ、御怒りを受ける事となってしまった。事情聴取と厳重注意を受けて、恐縮しながらお詫びした。その後、3人で昼食を取りそれぞれ帰宅した。  

GPS トラック (12月20日のもののみ表示)