武尊山(沖武尊) 2158m

   武尊山は我が家から近い山スキーの好適地で多くの山スキールートがある。標高が高いため冬季にはパウダースノーが楽しめる。しかも麓にはスキー場が何か所もありリフトを乗ることで高度を稼げる。

   これまで、オグナホタカスキー場、武尊牧場スキー場、宝台樹スキー場からのルートを取って武尊山の山スキーを楽しんできたが、川場スキー場からのルートを辿ったことは無かった。武尊山の最高峰である沖武尊に上がるには川場スキー場のトップから上がるのが最も近いが、途中に険しい剣ヶ峰山があるため、山スキーで上がる人は少ないようである。

   雪の合間の好天が期待された1月7日に川場スキー場から尾根通しに剣ヶ峰山を経由して沖武尊に上がり、川場谷を滑り降り途中の適当な所からスキー場にハイクアップして戻る計画を立てた。

   川場スキー場の積雪量を調べると10日くらい前の年末に160cmで、1月3日に10cmの積雪があり170cmとあった。雪が比較的締まり、落ちる雪は落ちているだろうから雪崩の恐れはそれほど無いだろうと予想した。また時期が早いし積雪量からすると下部の沢は完全に埋まっておらず危険なので様子を見ながら早めにハイクアップする事にした。

   この日、平日だが好天でスキー場は賑わっていたが、川場スキー場から剣ヶ峰山にスノーシューで上がった登山者が数名だけであった。武尊山まで上がったのは自分ただ一人。沖武尊から川場谷への滑降は素晴らしかった。しかし、谷からスキー場に上がるハイクアップはラッセルがきつく予想以上の時間がかかり疲れて足腰が痛くなったが、この程度の山スキーが未だ出来る事が分かり満足の山スキー行であった。
   

1月7日(火) 快晴、風弱し

単独
登行高度:660 m、 滑降高度:660 m 累積登高高度:1020m、GPSより) (ゲレンデは除く) 

川場スキー場ゲレンデトップ(9:00)-沖武尊(11:10〜11:45)−川場谷1500m地点(12:25〜12:45)−スキー場ゲレンデトップ(16:00)
   


  自宅を朝早く出て川場スキー場の駐車場に8時前に到着。準備してスキー場のリフト券売り場に向かい、登山届を出すとともにリフト券3枚を購入。リフトは8時半から営業開始。少し待ってからリフトに乗ることが出来た。リフト2本を乗り継ぎゲレンデトップに出た。

  天気快晴で風は殆ど無く、絶好の山スキー日和である。着ていたインナージャケットを脱いだ。スキーにシールを張り準備している時、2人ずれの登山者がやってきた。彼らはスノーシューで剣ヶ峰山まで上がるとの事。お先にと言ってシール歩行のハイクアップ開始。セミファットのスキーで足首程度のラッセルで初めは快調に進んだが、直ぐに剣ヶ峰山に続く細い尾根道となり傾斜は急になった。とてもシール歩行で上がることが出来ないので、スキーをザックに付けて歩いて上がった。雪は膝くらいあり傾斜が急でつらかった。上がり切ると比較的平坦な尾根道となり、再びシール歩行に切り替えた。ここまで約30分かかった。

  少し行くと剣ヶ峰山の登りとなる。非常に急である。尾根伝いに行くことを止めて東側の斜面をシール歩行でトラバースして急なピークを通り過ぎた。この後、尾根伝いに進み、2,3の小ピークをアップダウンして越えて1910mの鞍部に出た。東側は雪庇が出ている所があり、西側は樹林、ブッシュがあり歩きづらかったが、シール歩行を続けた。日曜日に通ったと思われるスノーシューの後が所々うっすらと付いていた。鞍部から剣ヶ峰山を仰ぎ見るとマッターホルンに似ている。

鞍部から見る沖武尊                鞍部から見る剣ヶ峰山              鞍部から見る通ってきた尾根筋
  

  鞍部から先の尾根筋は広くて傾斜も緩くなり歩き易くなった。もう一つの小ピーク(1975m峰)を越えて沖武尊直下で左側に回り込んで尾根筋に出た。頂上まで後わずかである。おそらく日曜日のものと思われるが、宝台樹スキー場から上がったスキーのトレースがうっすらと付いていた。

  沖武尊に2時間ちょっとで到着。風はややあるが陽射しが差して暖かい。汗をかいていて冷えてきたのでインナージャケットを着こんで行動食と水を取りながら長い休憩。

沖武尊頂上に到着                 頂上から見る燧ヶ岳、会津駒ヶ岳         頂上から見る至仏山
   

  雲一つない青空で周囲の山々の眺望を楽しんだ。目の前には剣ヶ峰山、川場剣ヶ峰、家の串、中ノ岳の武尊連峰。南東側に皇海山、日光白根山。南西側に赤城山。西側に浅間山、四阿山、南西側にはうっすらとだが富士山も遠望できた。反対側の東側から北側にかけては燧ヶ岳、至仏山、巻機山、谷川岳、仙ノ倉山から平標山、その奥には苗場山。


巻機山、越後三山                 谷川岳、平標山、苗場山             富士山が遠方にうっすらと見える
  



川場剣ヶ峰、家の串、遠方は皇海山        中の岳                        浅間山、四阿山
  


  休んだ後はシールを外して広い川場谷に滑り込んだ。上部はほどほどの急斜面で雪質はパックされてやや硬い所とやや重いパウダースノーの箇所があったが非常に滑り易い。ショートターンを繰り返しながら上部の快適斜面を滑り降りると斜度は緩んできて灌木が増えてきた。ブッシュを避けながら谷の右側を滑り降りた。

川場谷上部の滑りは快適            川場谷中間部のブナ林              川場谷中間部は沢が深く水が流れていた
  

 
  本谷に入り込む支沢の所で沢が埋まり切っておらず水が流れていた。本谷の方は沢が深く切れ込んでいてこの本谷を滑って行くのは危険である。支沢を少し登り返して安全そうな所で渡り谷沿いの滑りを続けた。しかし、次の支沢が出てきた。ここも安全に渡れるか疑わしい。谷沿いの1500m地点であったが、滑りはここまでとした。時刻はまだ12時半前。風が無くて陽射しが差して暖かい。インナージャケットを脱いで昼食を取りながら休憩。

  シールを付けて右手の斜度の緩い尾根筋をハイクアップ開始。当初は足首程度のラッセルでやや重い雪であったが順調に上がった。上がるにつれ雪が重くなるとともに深くなりラッセルがきつくなってきた。おまけに最中雪状態の箇所も出て来て、一足ごとに最中雪を踏んでゆくので時間がかかる上に疲れる。

  出来るだけ楽な方向にと思って上がっていたのが間違いで上がるにつれて急となりシール歩行が困難になってきた。そこでスキーを外しザックに付けて急斜面を上がることにした。雪は膝から腰くらいまであり、両手で2本のストックを持って雪面に食い込ませて身体を支えながら一歩一歩進めた。遅々として進まず疲れ、わずかの距離を上がるだけで予想以上の時間がかかってしまった。

  急斜面をスキーを担いで上がるのは止めて少し位下ることになっても左手の谷筋まで行き傾斜の緩い個所をシール歩行すべきであったと、後程GPSのトラックを見て思ったが、その時点では直に上がる事しか考えなかった。

   ようやく急斜面を上がり切り、シール歩行に切り替えて左手の谷筋上部をトラバースして上がりスキー場のトップに着いたのは4時。スキー場の営業時間が丁度終わるときであった。

   結局、川場谷の谷筋の1500m地点からスキー場トップ上部の1870m地点まで標高差370mを上がるのに3時間以上かかってしまった。スキー場トップでシールを外し一息ついた後、誰もいなくなったゲレンデ上部を一気に滑り降りた。ゲレンデ下部になるとかなりのスキー客が未だ滑っていた。

   10分もかからずゲレンデトップから下まで滑り降りて、急いでチケット売り場、インフォーメーションに行って下山の届けを出した。スキー場の関係者に心配をかけずに済んだ。

   スキー場のバックカントリー担当者からは条件が良ければ川場谷を県道のある下まで降りることは不可能では無いが、非常に危険なのでお勧めしませんとのコメントを頂いた。多分、雪が多くて下部も沢が完全に埋まっていて通ることが出来てしかも雪崩が起きないことが条件だろうが、下部は距離が長いのに標高差が無いので滑りとしては面白くないであろう。

GPSトラック