穂高岳: 岳沢から間天のコルを越えて西穂沢 (2838 m) 


  
昨年のGWに槍、穂高周回の山スキー行をRSSAのSさん、Mさんと共にしたが、最終日は天候が悪くなり上高地から西穂高岳周辺のコルを越えて新穂高温泉に至る部分が出来なかった。今年は是非そのやり残したコル越えをやりましょうとSさんと岳沢から間天のコルを越えて西穂沢を滑るルートを辿ることにした。GWは2人の予定が合わず2週間遅れとなってしまったが天候の良い17日に決行することにした。

  岳沢ヒュッテから間の沢を上がり間天のコルを越えたが、岳沢ヒュッテの手前から西穂高沢を上がり西穂高岳を越えるルートも有る。こちらの方が良かったかもしれない。

  広くてやや急斜面の西穂沢は雪が半分グサグサになっており小さな落石が所々点在していたが、標高差約1000mの滑りは腿が痛くなったが快適であった。

  
 
  
   5月17日(金)晴れ、風弱し

   2人(RSSAのSさんと)

登高高度:1335 m、滑降高度:1010 m、 歩行下降高度:720 m

上高地(6:25)−岳沢ヒュッテ(9:00〜9:40)−間天のコル
(14:10〜15:00)-白出沢出会い(15:30〜16:30)-林道(17:25〜17:50)-新穂高温泉(19:10

  沢渡の駐車場で車中泊し準備して始発の朝5時40分発の上高地行のバスに乗った。6時10分過ぎにバスは上高地に到着。スキーをザックに付け兼用靴を背負い軽登山靴で歩き出した。天気は快晴無風で気温も高い。

  河童橋を渡りこれから行く岳沢、穂高の山々を眺める。しばらく平坦な道を歩いた後、岳沢に上がる登山道に入った。周囲は雪が全く無く石がごろごろした林間の登山道を上がった。

河童橋から見る梓川、その上に岳沢と穂高連邦                    岳沢に入る登山道               
    

  沢沿いに入ってようやく雪がちらほら見えてきた。しばらく沢沿いを進んで雪が増えてきて繋がった。朝早いのでまだ雪が固い状態で歩き易い。2時間半かかって岳沢ヒュッテに到着。先行の前穂高に登ると思われる3人連れが準備をしていた。

岳沢から見る間の岳、天狗の頭、ジャンダルム   岳沢から見る西穂高沢                岳沢ヒュッテまで後わずか、奥穂高が見える
   

  岳沢ヒュッテでしばらく休憩。眼下には上高地、その上にに焼岳と霞沢岳さらには乗鞍岳が見える。反対側は前穂高岳、吊尾根。ジャンダルムから西穂高岳に至る稜線。未だ上部は雪が多い。

眼下に上高地、後ろに乗鞍岳             前穂高岳方面                      奥穂高岳の頭がちょっと見える
  

  これから上がる間の沢が非常に急に見えしビビってしまう。一方隣の天狗沢は斜度が緩そうに見え登り易そうである。Sさんと天狗沢を上がった方が良いかも知れないと話し合ったが、天狗沢に上がると天狗のコルから急峻な天狗の頭を越えて間天のコルまで行き西穂沢を滑ることになる。天狗の頭を越えるのは危険でやりたくない。

  西穂高岳直下に至る西穂高沢は斜度が間の沢ほど急には見えない。しかし、西穂高沢を上がるためにはかなり戻らねばならない。場合によっては引き返しても良いから当初の予定通り間の沢を上がりましょうと衆議一決。

  兼用靴に履き替えスキーにシールを付け、安全のためヘルメットを被りハイクアップ開始。初めは斜度もそれほど無く快調に上がって行った。天狗沢と間の沢は下部はデブリが多かったが、古いデブリで気温も上がったので軟らかくなり通過には問題無い。斜度がきつくなった所でシール歩行を止め、スキーをザックに付けてアイゼンを付けて歩き出した。先行のトレースはない。

              下部のデブリの横を上がる。左が間の沢、右が天狗沢。天狗岩が見える               
                 

  間の沢の直下に来たら岳沢ヒュッテで見たほど急には見えない。これなら上まで行けますねとSさんと話しながらアイゼン歩行を続けた。雪は緩んでいてアイゼンが良く効いてそれほど危険は感じられないが転んだら下まで滑落するだろう。Sさんが先頭でストックを頼りに緊張しながら上がって行った。

  途中沢の端の岩陰で休憩。下を見るとやはり急である。上部はさらにやや傾斜が急になったが、ゆっくり慎重に歩を進めて間の沢を上がりコルに到着。岳沢ヒュッテから4時間半かかった。一時間で標高差180m位の登りで予想以上の時間がかかった。先行のステップが階段状についていたらそれに従いもっと楽に早く上がれたであろうがそうでない場合は神経を使い遅くなることを痛感した。

 途中の休憩地点から下部を見る                        コルまで後わずかを上がるSさん
     

  コルで昼食を取りながら長い休憩。正面には前穂高岳、横にジャンダルム、その後ろに頭だけが見える奥穂高岳が見える。遠くにはかすかに富士山が頭だけ見えた。反対側には笠ヶ岳、双六岳の雄姿が見える。眼下には西穂沢が続いている。西穂沢上部は白出沢上部と同じように落石で覆われていた。横の斜面から小さな石が落ちているのが見えた。こんな石でもまともに当たれば大怪我するであろう。

 眼下に西穂沢、正面に笠ヶ岳、双六岳                        ジャンダルム、奥穂高岳
     

  多くの落石のためコルから滑ることは無理である。アイゼンを付けたまま20〜30m下り大きな石の所でアイゼンを外しスキーを履いて滑降開始。雪が緩んでいてやや重いが広い急斜面をショートターン、ロングターンを交えて滑り降りた。小さな落石が点在しているので避けて滑ったがそれでも時々ガリと嫌な音を立てる。快適な滑りを続けたが、太ももが痛くなるので時々立ち止って休んだ。

    コルの直下を滑るSさん                             西穂沢中間部から上を見る
         

  標高差約1000mを30分かけて滑り降りて西穂沢と白出沢の出会い付近まで下りた所で沢沿いはブッシュが出てきてそれ以上スキーが難しくなった。下りのルートがはっきりしない。スキーを外してザックに付けて歩きに変えた。

     ブッシュが出だしてきた白出沢との出会い部               西穂沢最下部より上を見る
        

  ブッシュの中を少し登り返して地図上にある夏道の登山道を探してうろうろしたが雪に覆われているので登山道がはっきりしない。まずいことに自分のGPSは電池切れ間近であったためトラックにかなりの誤差が出ていた事に気付かなかった。電池を入れ替えて間違いに気づいた。SさんのGPSは間違っていなかった。GPSと地図を再確認して林の中をうろうろしてようやく夏道の登山道を見つけた。ここで迷ったため1時間ほどのロスとなった。

  ほとんどが雪に覆われた登山道は歩きづらい。時々踏み抜いたり登山道で無い所を通ったりしてようやく白出沢出会いの林道に到着。時期が早ければ雪がもっと多く林間でも沢沿いでもスキーで降りて来られるだろう。雪が無ければ登山道は分かり易くてもっと歩き易いだろう。どっちつかずの中途半端な時期だったかも知れない。

  疲れたのでしばらく休んでから軽登山靴に履き替えて兼用靴を担いで林道をひたすら歩いて暗くなる直前に新穂高温泉に到着。

           林道わきにいたカモシカ、じっとして動かない
           

   新穂高温泉の様子が昨年と変わっていてバス停も別の場所に移っていた。平湯行の最終バスはすでに終わっていた。バス停の近くのホテルに宿泊をお願いすると満員だと断られた。ホテルのフロントの話ではタクシーを呼ぶと神岡から来るので40〜50分かかり料金も高い。付近にあった旅館はすべて廃業し下の無料駐車場の先の橋を渡った旅館が営業しているのみであるとのことであった。

  仕方なくザックやスキーを置いてSさんと暗い中を歩いてその旅館深山荘に向かった。幸いその旅館に宿泊出来てスキー、ザックの回収に車を出してもらえた。ほっとして温泉に入り特別に作ってもらった夕食代わりのおにぎりを食べながらビールで乾杯。

  いろいろあったがどうにか昨年からの宿題をやり終えたという気分で満足感を味わった。いずれにしてもこの山スキー行が出来たのは同行したSさんのお蔭であり感謝する。
   
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