槍ヶ岳、穂高岳周辺 3101m(今回達した最高地点) 

   RSSAの古くからの会員で60代のSさんからメールでGWにオーバー60世代で一緒に槍ヶ岳、穂高岳一周の山スキーをやりませんかとの誘いを受けた。
予定では
29日朝に新穂高温泉を出発してその日は槍ヶ岳山荘泊。
30日は槍ヶ岳山荘から中岳-天狗原-氷河公園-横尾本谷右俣-涸沢出合-涸沢ヒュッテ泊。
1日は涸沢ヒュッテ-前穂高北尾根5,6のコル-奥又白池-奥又白谷(松高ルンゼ)-新村橋-上高地(泊)。
2日が上高地−岳沢−間の沢-間天のコル−西穂沢−白出沢−新穂高温泉
と言うチャレンジングな計画。

  槍、穂高方面はアプローチが長くて厳しいので、自分の年、体力から考えてこれが最後になるかなと思いながらSさんの計画に乗って同行することにした。
   特に5,6のコルから奥又白池までスキーで行った記録は見つからず、自分のスキルでは相当難しいのではと言う印象を受けた。実際に行ってみて様子を見て行くかどうかを決めましょうと提案した。同行者やはり定年退職となったRSSA会員のMさん。前半は都合が付かず後半の涸沢からの参加となった。
   Sさんのコース取りは時間がかかりそうなノーマルルートをはずして地図を見ながら行くもので参考になったが自分のスキルでは厳しい所があった。
  特に30日には中岳と南岳の間の稜線上の雪庇の割れ目から急斜面をドロップした時には恐ろしい思いもした。1日の5,6のコルに上がった時はガスが出ていて反対側の奥又白池方面の様子は全く見えず、残念な思いとホッとした思いを持ちながら涸沢方面に戻った。
  また、2日は朝から雨が降っており岳沢から間天にコルを経て新穂高温泉側に抜けることは出来ず、バスと車で上高地から新穂高に戻った。



  
4月29日(日)晴風弱し
2人で
登行高度:1930 m、 滑降高度:0 m  

新穂高温泉(5:30)-白出沢出合(7:10)-槍平小屋(10:40-11:20)-飛騨沢2440m地点(12:50-13:00)-飛騨乗越(16:25-16:35)−槍ヶ岳山荘(17:00)


  前夜新穂高温泉の駐車場に到着して車中泊。朝起きて準備してバス停前の登山事務所に集合し登山届けを出した。スキーとスキー靴をザックにつけて軽い運動靴で.歩き出した。林道には雪が無い。白出沢出合手前まで除雪されていた。

  除雪終了地点で兼用靴に履き替えてスキーを担いで右俣谷沿いの登山道を進んだ。ブドウ谷、チビ谷、滝谷方面からのデブリがあるもののそれ程大量でなく、まT雪もほどほどに締まっており歩き易い。3年前の同時期に来た時には大量のデブリで歩きずかったのと比べ雲泥の差。5時間足らずで槍平小屋に到着。冬季用の小屋を眺め、行動食をとり休憩。辺りにはテントが張ってあり、登山者のグループがいた。

白出沢出合付近                     槍平小屋と穂高連峰                飛騨沢中間部で休憩
  

  ここでシールをつけて緩斜面の飛騨沢をハイクアップ。始めは快調だったSさんのペースが斜面が急になるあたりからから極端に落ちてきた。昨日の夜に自宅を車で出てあまり寝ておらず、疲れが出てきたとのこと。上からは登山者、山スキーヤーが次々と降りて来た。雪は柔らかいがデブリは殆んど見られない。ゆっくり上がり飛騨乗越でSさんを待って一緒に槍ヶ岳山荘に上がった。テント場ではテントが5,6張り。宿泊をお願いし夕食を取った。

飛騨沢上部                         槍ヶ岳が迎えてくれる                槍ヶ岳山荘
    
 登山客は大勢いるが、山スキーで来た人は少なく10人以下であった。
  


  
4月30日(月)晴後薄曇り、風弱し
2人で
登行高度:890 m、 滑降高度:1620 m (GPSのトラックから) 

槍ヶ岳山荘(10:05)-大バミ岳(10:35-10:40)-中岳(11:25−12:00)-中岳と南岳の間の稜線上のドロップポイント(12:10-13:25)-横尾尾根のコルの上(13:40-14:10)−横尾本谷出会いの上(14:50)-涸沢ヒュッテ(17:05)


  朝食は7時までに終わったが、雪が緩むのを待って10時出発とした。登山者は皆出発したのに山スキーヤーはゆっくりしている。しかし、気温が高く雪は緩んでいてもっと早く出るべきだった。スキーをザックに担いでアイゼンを装着してSさんの先導で歩き出した。

  飛騨乗越から滑り降りるグループを見ながら大バミ岳の登りにかかった。トレースが付いていて上りやすい。大バミ岳には良いペースで上がった。頂上からの槍ヶ岳、穂高連峰、乗鞍岳、常念岳の眺望が素晴らしい。さらに稜線を進み中岳で行動食と水を取り休憩。

中岳から見た穂高連峰                中岳から見た大バミ岳と槍ヶ岳         南岳と北穂高岳をバックに
  

  さらに進んで2986m峰の先でドロップポイントを探して稜線上をうろうろとした。雪庇が落ちていないし、稜線から下は急斜面で下には岩がありとてもここから滑り降りる気がしない。行ったり来たりして探した結果、雪庇の割れ目の隙間からドロップしようとSさんが提案した。

  Sさんはスコップで雪庇の割れ目の先の雪を掻き出して人が通れるように拡げて、屈みながら雪庇の下のドロップポイントに出た。そこから急斜面で落ちないように右手にピッケルを持ち山側に刺して確保し、左手にストックを持って谷側をささえて一歩づつスキーを進めて行った。そのまま少し行った後、斜滑降体制に入った。雪は緩んでいるとは言え急斜面でこんな所で滑落すれば下まで一直線に滑り落ち岩に激突しかねない。

ドロップポイントを探すSさん             雪庇の割れ目からエントリーするSさん     雪庇の割れ目の先端で足場を確保
  

  自分もSさんに続いて雪庇の割れ目からピッケルで確保しながら降り出した。これまでに降りた中ではもっとも急斜面で厳しいと感じた。奥穂高岳直登ルンゼも急だったがそれ程恐怖感を感じなかったのに対してこちらは怖かった。わずかな距離だったが夢中で緊張のため腕と足の腿が痛くなった。少し行って斜面がやや緩くなった所で一息つき写真を取った。その後斜滑降とターンを続けて横尾尾根のコルの右上の尾根上に出た。

                   雪庇の割れ目からの恐怖のエントリーを振り返る
                  

  緊張から開放されてしばらくここで休憩。横尾右俣の上部の急斜面を滑り降りたが、雪が柔らかくて重くスキーはうまく操作できない。おまけにやわらかい雪の上を湿雪雪崩が起きていてデブリや縦溝が出来ている。デブリの無い所でターンをしたら小規模な湿雪雪崩を引き起こして少し流されたが直ぐに止まってくれた。

横尾谷右俣上部                    横尾本谷                        涸沢ヒュッテに向かってトラバース                   
  

  南岳の手前の上の方を見ると雪庇が見えない。稜線上の状態がどうなっているかははっきりしないが、こちらの方がドロップポイントとして良かったのでは無いかと思った。

  下に行くにつれ傾斜は緩くなって緊張感は無くなってきたが、雪は柔らかく重いので足が疲れてスキーの滑りを楽しむまで行かない。下部の出会い近くになって、Sさんが一番下まで行くと涸沢までの登り返しが大変なので、右側の斜面を上がって斜度を落とさずトラバースしながら行こうと提案された。そこで、シールをつけて斜面を上がりトラバースを続けた。下には登山者が歩いているのが見えた。

  雪は柔らかく重いが滑りやすいのでさらににクトーを付けてトラバースを続けたが、途中で小規模な湿雪雪崩に見舞われ40-50m下に流されてしまった。シールもクトーもつけず斜滑降で急いで滑りながらトラバースをした方が良かったであろう。

  さらにトラバースを続けて最後は下の登山道に出てハイクアップを続けた。疲れて足が重くなりようやく涸沢ヒュッテに到着。途中から参加するMさんも来られ一緒に食事。疲れた身体にはビールと夕食は有難い。寝るスペースもゆったりしていた。

  ここも登山者は多いが山スキーヤーはそれほどいないようであった。

 5月1日(火)晴後曇り、風弱し
3人で
登行高度:400 m、 滑降高度:1300 m 歩行下降高度:105m

涸沢ヒュッテ(8:10)-前穂高岳北尾根5,6のコル(9:45-10:40)-涸沢ヒュッテ(11:00−12:00)-梓川渡渉点(14:50−16:10-上高地(18:25)


  今日も朝食は7時までに終わったが、雪が緩むのを待って8時出発とした。雲が一部かかってものの晴れている。大勢の登山者が奥穂高岳を目指して正面のザイテングラードを上がっていた。また、右手の北穂高岳に上がっている人も目に付いた。

  我々はアイゼンを着けスキーを担いで前穂高岳北尾根5,6のコルを目指して上がって行った。雪は比較的やわらかい。先行の4人連れのトレースを有り難く使わせていただき上がった。この4人連れは県警の山岳救助隊で、コルの近くで訓練をしていた。

  Sさんの次に私が上がったが、先行のトレースのお陰で一時間35分でコルに達した。しかし、コルに上がる直前から反対側の梓川方面からガスが上がって来てコル付近もガスで覆われ見通しが効かなくなった。残念ながら奥又白池方面は全く視界が無い。これでは先に行くのは無理ですねと衆議一決、涸沢ヒュッテに戻ることにした。遅れたMさんが上がって来た後。ガスの切れ目を待ってコルから滑り降りた。

北尾根5,6のコルを目指して上がる         北尾根5,6のコルの上部              昨日滑り降りた横尾本谷右俣
    



  上部はやや急斜面だが比較的雪が締まっていて滑りやすかった。しかし、下るにつれて雪は柔らかく重くなり疲れてくる。それでも20分で涸沢ヒュッテに戻り、周囲の穂高連峰を眺めながら生ビールを飲んでおつまみで昼食。

  もっとのんびりしたい所だが天気は悪くなる方向にある。12時からSさんの先導で涸沢、横尾谷の右岸の山際をトラバースしながら滑り降りた。雪が比較的多いので登山道に降りず行ける所まで行きましょうと屏風岩の下を通り屏風の頭を回りこんで進んだ。しかし、下に降りるにつれ雪は消えてきて藪となった。

  仕方が無いので梓川の川岸まで降りる事になった。ここで、Sさん、Mさんとはぐれてしまい藪の中を一人で川岸まで降りた。Sさん、Mさんを探してうろうろしている間に時間がたってしまった。携帯電話も通じない所だし、笛を吹いても水の流れの音で聞こえない。

  彼らも山慣れた人だから問題無かろうと考えて、少し上流に行き梓川の渡れそうな所を正規の登山道のある対岸に向かって渡渉を始めた。しかしは渡渉箇所の選定が悪く、最後の一歩の足を踏み出した時急な流れに流されて倒れた。直ぐに対岸に付いたものの全身ずぶぬれになってしまった。幸い、着替えの下着、ズボン、靴下、インナージャケット、タオルなどポリ袋に入れてあったので濡れておらず着替えて事なきを得た。着替えている間にSさん、Mさんが上から降りて来た。彼らはもっと上流で渡渉をしたとの事。もっと上流で渡渉すべきだった。

  濡れた衣類をポリ袋に包んでザックに入れ、運動靴に履き替えてスキー、スキー靴をザックにつけて歩き出した。新村橋、徳沢、明神を経てようやく上高地に到着。西糸屋山荘に宿泊。さっそく、濡れた衣類などを乾わかすためボイラー室に置かせて貰った。入浴後ビールで乾杯し夕食。豪華な夕食で山行の途中でこういう所に泊まりゆったりするのも良いですねと話し合った。

  その後の天気予報では明日は雨。岳沢、間天のコル越えで新穂高温泉に行くのは中止となった。濡れた衣類や手袋を付けて行かずに済んでホッとすると共に少し残念な気もした。


5月2日(水)雨

上高地-沢渡-新穂高温泉


  朝から小雨が降っていた。岳沢は良く見えるが穂高岳の上のほうは雲に隠れて見えない。小止みになった合間を見て上高地バス停に行き沢渡まで行き、Mさんの車で新穂高の駐車場まで送ってもらった。ここで、皆と別れて帰宅した。
 
  GPSトラック (新穂高−滝谷出合間は電池切れでトラック無し)