オートルート  

   4年前の4月上旬にシャモニのガイド協会が募集したオートルート行に応募して国際的なメンバー編成で行き、楽しい山スキー行が出来た。しかし、悪天候や参加メンバーの足並みの関係で肝心の最初のコル越えと最後のマターホルンの下を通る長いルートを辿ることが出来なかった。
そこで、前回と同じ4月上旬に4年前に行けなかった箇所を通ることを願って再度行くことにした。
   今回は時々山スキーで同行するYさんが申し込まれたのと同日程のAT社のツアーに申し込んだ。参加したメンバーは4人で、全員60代だが山スキーに慣れた登りの足も下りも比較的強い足並みの揃った方ばかりで会話も弾み心強かった。
   しかし、今回も悪天候に阻まれ前回以上に行けた箇所が少なかった。それにもかかわらず、予定変更に伴う交通費等は請求され、お金は前回より圧倒的に掛かったのに余り楽しめない残念な結果となってしまった。(ちなみに4年前は1ユーロ165円程度だったが、今は1ユーロ110円程度で今の方が圧倒的に有利なはず)
   また、悪天候に伴なうことが多いが勝手にスケジュール変更して後から了解を求めてきたツアー会社(A社及び現地で対応したAPJ社)には何か割り切れないものを感じた。特に、初日の当初の予定を変え、日本から長時間かけて着いた翌日の朝から荷物、体調や足並みのチェックをせずいきなりきつい行動としたがどうかと思う。今回は足の強い山スキーに慣れた人ばかりで問題となら無かったが、少し足の弱い人がいた時はどう対処されるのだろうか?公募ツアーですべてのスケジュールを決められているのでもっと考慮して欲しいと思った。
   今の所、オートルートはもう結構と言う感じである。行くとしたら、個人で行って天候と体調を見ながら現地でせいぜい2,3日のガイドツアーを申し込もうかと思った。

今回のオートルート行 (赤の実線が実際に行っコース、赤の点線が予定のコース、青線が車あるいは列車で代わりに移動)



  
4月5日(木)
  成田発スイス行きの飛行機は午前中に出るので、前夜成田駅前のホテルの前泊。朝7時半に成田空港着。同行するYさんも来られた。宅急便で送っていたスキーとザックを受け取り、円をユーロに両替した。交換レートはあまり良くない。
  チェックインして飛行機に乗り込んだ。10時半ごろ飛行機はチューリヒに向けて出発。客席は比較的すいていてゆったり座る事が出来た。
  
長い飛行時間(約12時間)の後、チューリッヒ着。国内線のジュネーブ行きに乗り換えてジュネーブに着いたのは夕方6時過ぎ。

  AT社は現地係員と言っていたが、実際には現地のすべてのスケジュールの調整や送り迎えをやっていたAPJ社の神田さんが出迎えに来られていた。神田さんの運転する車でシャモニのホテルに向かったが、フランス-スイス間の国境まで渋滞でやや長い時間がかかり、ホテルに着いたのは8時過ぎ。
  ご主人の神田氏から明日からのオートルート行の簡単な説明を受けた。明日8時集合で直ぐにグラモンテに上がりツアーを行なうとの事。事前のスケジュールでは初日はバレブランシェ滑降の予定であったが、オートルートの終わった後に変更と言う。着いた翌日はゆっくり準備し調子を見ながら体調を整えていく行く事を期待していたのでやや戸惑う。
  その後、神田氏の案内でピザ屋に行き、ピザで夕食。やや遅く就寝に着いた。

  4月6日(金)晴れ薄曇、やや風がある。(シャモニ-グラモンテ-アルジェンチール氷河-ツアーノールのコル-ロニヨン小屋)

  朝7時半に朝食。昨晩準備をしていたが最終的な山スキーの準備にやや掛かり、8時集合に少し遅れたが、神田氏より遅れるなとの厳しい注意を受けてやや緊張。前回のガイド組合のツアーの時は10分くらい遅れてきた人が大勢いたので
良いだろうと考えていたが、今回は厳しそう。

  同行者の顔合わせがあった。全部で4人とガイド。Yさんの他は、福島から来られたAさんとSさんで5,6日前に来られていて、もうイタリア側のグランデパラディーゾの山スキーを楽しまれたとの事。山登りも山スキーも熟練された方であった。ガイドはイタリア人のニコラス。

  すぐにアルジェンチールに向かいロープウェー2本を乗り継いでグラモンテに上がった。ログナン氷河を滑り降りてアルジェンチール氷河まで下った。その後、シールをつけてハイクアップを開始。福島のお2人はガイドに着いて快調に進むが、私は着いて行くのが精一杯。Yさんはさらにお疲れのようで私の後となった。それでも、何とかツアーノールのコルの到着。午前中は雲が少なかったがだんだん雲が出てきて、コルの上は風が比較的強い。天気は崩れる方に向かっていた。

     

  コルから長い滑降の開始。時々止まって休んでから滑り降りた。途中、アルジェンチール小屋に泊まる予定であったと言う数名のグループが明日は天候が崩れるとの事でキャンセルしたと言っていた。我々はアルジェンチール氷河を下り降りてスキー場にあるロニオン小屋に泊まった。
  ロニオン小屋はスキーヤーズベッドのような小屋で、本日の客は我々のみ。

 4月7日(土)曇り時々雪 (ロニヨン小屋-アルジェンチール-シャンペ)

  朝起きると曇り空で小雪がちらついていた。見通しもあまり良くない。本日の予定は上のロープウェー乗り場からグラモンテまで上がり
アルジェンチール氷河
まで降りてからパッソンのコルを越えてツール氷河を滑り、さらに2つのコルを越えてシャンペまで行くオートルート前半のハイライト。
  しかし、上のロープウェーは故障で動かない。しかも天気はだんだん悪くなっていく方向。何時動くか分からないロープウェーを諦めてゲレンデを滑り降りて、アルジェンチールからシャンペまで車で移動することになった。理由は違うが全く前回と同じパターンでがっかり。

  神田さんの運転する車でシャンペまで行き、シール歩行で少し上のロッジまで行き宿泊。ここも宿泊客は我々以外に2人だけ。午後には雪が少し強くなってきた。このような天気でも上から滑り降りてくるグループがあった。

  4月8日(日)曇、やや風がある。シャンペ-ベルビエール-ショーのコル−モミンのコル-プロフラリー小屋)

  ロッジからシャンペまでわずかな距離を滑り降りて、神田さんの車でベルビエールまで行った。天気は曇り空だがこの天気なら行動可能。数グループが同じルートでプロフラリー小屋に向かうようである。ロープウェー2本を乗り継ぎ上まで上がった。その後、少し滑り降りてからシールでハイクアップ。ショーのコルを越え
て滑り降りてからシールを着け再度のハイクアップ。ロザブランシェを上がっていくパーティーもあったが、我々のガイドは目もくれずロザブランシェをパスして進んだ。

 先行のトレースに付いて進んだが先行のグループが躊躇している。みると急斜面のルンゼ状になっていた。我々のガイドは先に降りた2人に続いて果敢に滑り降りた。我々4人もこれに続いて急斜面を滑り降りてからスキーを担いで上がりプロフラリー小屋に到着。我々のグループのペースは早くこの日は一番先に到着。この後、小屋で昼食。

              

  4月9日(月)晴れ薄曇 (プロフラリー小屋-ルーのコル-ディス小屋)

  
朝6時朝食、6時半出発。雪崩の恐れがるとのことで早立ちとなった。シールをつけてルーのコルをハイクアップ。コルでシールをはずして、ディス湖の横の長いトラバース。湖のはずれでシールを着けてハイクアップしたが、4年前の記憶は薄れていて良く覚えていない。ただ、目の前に見える雪のヒダがきれいな山、M. .Blanc de Cheilonだけは見覚えがあった。11時過ぎにはもうディス小屋に着いていた。今日も快調なペースで進んだ。小屋で昼食。

        

  ディス小屋では4月後半に行なわれるベルビエール-アローラ(ツエルマット?)間の山岳スキーマラソンの選手がくつろいでいたので、尋ねた所参加者は全部で1500人くらいいて夜10時に出発で制限時間は20時間(24時間?)で、優勝者は8時間で走破するとの事であった。彼らもそれに参加するので準備のトレーニングをやっているとの事で下っていった。

  4月10日(火)晴れ薄曇、やや風がある。 (ディス小屋-ピンダローラ-ビネット小屋)

  今日も朝食は6時。小屋を出たのは我々が朝一番であった。少し滑った後は緩斜面の上り下り。
早めにシールを着けたほうが早いし、疲れないと思うが、我々のガイドは行ける所までシールをつけないで進んだ。そのうち、後続のシールをつけたグループに追い越された。少し急になった所で
シールを着けてハイクアップ。風はあるものの晴間が多い薄曇。目の前にこれから進むピンダローラが見えてきた。

            

  その横には遠くマッターホルンの雄姿が遠望できた。ピンダローラの手前で雪が固く傾斜がやや急になってきた。ここで、クトーを着けてガイドがロープでメンバーをアンザイレン。こうすれば滑落の危険性は無い。しかしこの程度の固さの雪では丁度クトーが効いてアンザイレン無しでも充分行けるという気がした。やや急な斜面を上がると後はピンダローラ頂上まで緩斜面が続いた。ザイルをほどき、クトーをはずして最後の登りでピンダローラの頂上に達した。ガイドと握手して登頂できたことを喜んだ。

            

  10近い人が頂上からの眺めを楽しんでいた。薄曇でやや風が強いものの遠方まで見通しが効いてアルプスの山々の眺望が素晴らしい。特徴あるマッターホルンやバイスホルンが目の前に見える。その他アルプスの名山の名前をガイドに聞いたが忘れた。

  前回もピンダローラに上がったが曇り空だったのでアルプスの山々の眺望を楽しむことが出来なかったので今回は良かった。シールをはずして風でパックされてやや固いもののパウダースノーの滑りを楽しんだ。しかし、先行のグループがルートミスをしたようで、それに附いて行った我々も少し上り返した後、ビニエット小屋への滑りを楽しんだ。岩の間を通り抜け最後の急斜面を滑り降りてビネット小屋に昼頃到着。小屋で昼食。大勢の人が食堂で昼食を食べていたが、多くはその日のうちにアローラに下って行った。

  午後は視界があったが、夕方から雲が出てきて見通しが悪くなった。明日は天気が悪くなると言う天気予報。明後日は午前中は天気が良いが午後には崩れると言う天気予報。明日の天気を見ながら場合によりここで2泊しようという事になった。

  4月11日(水)雪後曇り (ビネット小屋-アローラ-ツエルマット)

  朝起きると天気は悪い。ガスっていて見通しが悪く雪が降っていた。新たな3種類の天気予報はいずれも今日は悪天候。明日はさらに天候が悪くなるとの事であった。
早い朝食を終えて模様眺めをしていたが、明日の天気がさらに悪くなるとの事で、予定変更をしてアローラに下るグループが出てきた。小屋の主も明日の天気が期待できないので今日中に降りた方が良いとアドバイスしているようであった。

  結局我々も今日中にアローラに下ることにして用意して9時に小屋を出て10時にはアローラに着いた。アローラのバス停に歩いていく間、今回もツエルマットまで行けなかったかと足取りは重かった。バスがしばらくして来た。ビネット小屋で顔を見た大勢が乗っていた。彼らもツエルマットまで行くのを断念して降りて来たのである。バスはシオン駅まで行った。シオンからは我々を除いてビネット小屋から降りたすべての人がジュネーブの方に戻っていった。我々のみが電車でツエルマットまで行き駅近くのホテルのスキーヤーズベッドに宿泊。

  4月12日(木)晴れ (ツエルマット-フーリ-スタフェルレストラン-ツエルマット-シャモニ)

  昨日の天気予報に反して天気は晴れ。ツエルマットでロープウェーを利用してクライネマッターホルンまで行きブライトホルンに上ったりスキー場のオフピステを滑ることを期待したが、ツエルマットまでのオートルートコースの逆をシェーンブル小屋までシールで上がって降りると言う。
  満員のバスに乗り終点で降りた。我々以外はすべてロープウェー乗り場に向かった。我々はここでシールをつけてスキー場のコースの端をハイクアップ。フーリからシュワルツゼーに上がるスキーコースでやや急斜面になる所で上から次々とスキーヤーが滑り降りてきた。
  こんな所をハイクアップするのはイヤだと皆が言い出した。そこでガイドはフーリーまで降りてフーリーから一部雪が切れている所があるが、スタフェルのレストランまで行き昼食をとり戻ろうと言う提案をしたのでそれに従った。こちらもスキー場のピステのコースで滑り降りてくるスキーヤーに出会った。そもそもスキー場のピステを滑っていく人の横をシールをつけて上がるなんて馬鹿げた事だ。

            
    

  ステフェルのレストランに12時前に着き長い昼食。上は雲が掛かっているが目の前のマッターホルンを見ながら、皆でビールで乾杯。昼食を取り,デザートまで食べゆっくりした。今回も最初と最後の肝心な所を行けなかったオートルート行を振り返った。

   予定より早く降りたのでツエルマットからの電車も早く乗りテッシェーに着いたのも予定の時間よりかなり早かった。寒い風が吹く中をしばらく待った後、予定時間の4時ぴったりに神田さんの迎えの車が来てシャモニまで戻った。