白馬槍ヶ岳(2903m)

 
  5月はゴールデンウィークの後半に鹿島槍ヶ岳に山スキーに行った後、畑仕事に精を出し過ぎて腕が腱鞘炎気味になり痛くてとても山スキーに行く気にならなかった。その間映画「岳」を見てその中で画面いっぱいに広がる雄大な雪山の景色を見て今年もう一度山スキーに行きたいと思った。

   5月下旬になりようやく腕の痛みが引いてきた。天気予報では25,26日は天気が晴れでその後天気が良くない。そこで、意を決して白馬槍ヶ岳に上がり、槍温泉で温泉を楽しむ計画を立てた。このコースで行くのは3回目だが、今回は23日の月曜日に降った積雪の影響でもっとも厳しかったが、それでもシーズン最後の山スキーを楽しむことが出来た。

   24日の午後自宅を出た。
上信越道を通ると浅間山の標高2000m以上が降雪で真っ白なのを見て嫌な予感がした。この時期の積雪はぐちゃぐちゃの重い雪でスキーは楽しくないし雪崩やデブリがでている可能性がある。

   白馬に着いて白馬飯店で夕食を取り、温泉に入ったあと猿倉まで行き車中泊。さすがに停まっている車は自分の他一台だけ。その後、2,3台がやってきた。


5月25日(水) 晴、風弱し


単独
登行高度:1880m 滑降高度:1750m 歩行下降高度:130m
猿倉(4:50)-稜線(9:40)-白馬槍ヶ岳(11:40〜12:30)-白馬槍温泉(13:05〜14:15)−小日向のコル(15:25)−長走沢出合(16:15)−猿倉(16:45)

   朝4時過ぎに起床。簡単な朝食をを取り準備して4時50分にスキーを担いで出発。猿倉の林道は殆んど雪が溶けていた。長走沢出合で上を見上げると一部雪が切れていて沢の水が流れている。そのまま滑り降りるのは不可能だが横を巻いて行けば何とかいけそうであった。

  長走沢出合から雪が出てきたが一部切れているし雪が締まっていたのでそのまま白馬尻まで担いで歩いた。はるか先に先行者の山スキーの一人と登山者が一人の姿が見えた。ここでシールをつけてハイクアップ開始。雪面は古いデブリの後や黄砂の影響であまりきれいでない。しかし、雪は締まっているのでハイクアップは楽である。上に行くと月曜日に降った雪できれいな白色となった。

  未だ時間が早く気温が上がっていないのでこれらの新しい雪は落ちないが、気温が上がると雪崩を起こして落ちていく可能性がある。途中で白馬岳を往復すると言う坪足の先行者に追いついた。

  小雪渓の急斜面の手前でアイゼンを着けスキーを担いで歩いて上がった。雪は比較的締まっていて歩き易い状態であった。急斜面を上がりきると雪は柔らかくなり足首位の深さになった。ここで、再びシール歩行に切り替えて先行者のトレースに従って正面左手の尾根に向かった進んだ。

大雪渓下部(先行者が見える)             小雪渓を上がった所から見る杓子岳      雪に覆われた杓子岳をトラバースする登山道
     

  
  途中斜面が急になった所でスリップしたのでクトーをつけて上がリ稜線の上に出た。ここで再びスキーを担いで尾根通しの登山道を歩き出した。ここから前2回は雪が消えた登山道を歩いて白馬槍ヶ岳に上がったのだが、今日は登山道の大部分に月曜日に降った雪が積もっている。雪が無ければ楽な登山道だが今日はちと厳しい。

  日が照っているところは柔らかく吹き溜まりでは膝くらいまで埋まる。先行者のトレースを有難く使わせて貰う。しばらく行くと先行者が休んでいた。彼はここから鑓ヶ岳に行くのを諦め引き返すと言う。

  時間は未だ早いし雪の状態から見て行けそうなので、自分はここでシールとクトーを付けて頂上まで行くことにした。杓子岳の横を巻く
トラバースの登山道沿いの雪は北面に有るためほどほどに締まっていて、クトーが良くかんで比較的歩きやすかった。


  杓子岳と鑓ヶ岳のコルも雪に覆われていた。正面の鑓ヶ岳に上がる登山道も雪に覆われていた。登山道を上がるのは止めて右側にトラバースして広い北西側斜面をシールでハイクアップした。こちらも雪が柔らかい所もあったがほどほどに締まっていてクトーが良く効き上がりやすかった。適当にジグを切り白馬鑓ヶ岳の頂上に達した。

杓子沢                        白馬鑓ヶ岳から見る白馬岳と旭岳       剣岳と立山
    

  周囲の山々の眺望を眺めながら長い昼食の休憩。頂上から杓子沢に下るルンゼ、直登ルンゼは新雪に覆われて真っ白。ところが南に面した大出原方面は頂上直下は岩が出ている。

  少し岩の上を歩いて雪の上に出てスキーをつけて滑降開始。雪の下に岩が隠れているようで時々ガリと嫌な音がする。少し下がると隠れていた岩が無くなった。しかし、月曜日に降った白い新雪はぐちゃぐちゃの柔らかい雪であった。この白い雪と汚れたザラメの雪がまだら模様になっていた。ぐちゃぐちゃの新雪は滑りにくいので出来るだけ汚れたザラメの雪を選んで急斜面を滑り降りた。

  しかし、ザラメ雪が切れて新雪の部分になった所でターンしようとしたら新雪の層が崩れて雪崩となり足をすくわれて頭を下にして流された。流されながら体制を立て直してスキーで制動をかけて停止をしようとしたが、柔らかいが重い雪に押されてふんばった片足のスキーが外れて再び外れたスキーと一緒に下に流されだした。どうせ下に行けば傾斜が緩くなり停止するだろうと思ったが速度は遅くなるものの止まらない。再び体勢を立て直して出来るだけ流れの中心から流れてくる雪が少ない端の方に移動して片足のスキーで制動をかけて止まることが出来た。幸い外れたスキーも一緒に動いてくれたので直ぐに回収できた。立ち上がって見ると直ぐ横を雪崩れた雪がゆっくりと次から次へ流れていった。
             雪崩で停止した地点から上を仰ぎ見る
               

  雪崩の幅は5〜6m位だろうか?流された距離は後でGPSで確認した所、標高2750mから2480mまでの標高差で250m以上あったようだ。幸い新雪は10cmくらいの厚さでそれほど多くなく重いが柔らかい雪で落下速度も速くなかったので事無きを得た。締まったざら目雪の上に湿った柔らかい雪が積もればそれが雪崩落ちるのは当然のことで注意しなければいけないと痛感した。

   一呼吸置いた後、再度スキーを付け雪崩れた後のざら目雪の上を滑り、さらに新雪やデブリを避けて鑓温泉まで滑り降りた。鑓温泉の上部はデブリが一杯であった。

   鑓温泉では6,7名のグループと男女2人ずれがいた。彼らは小日向のコルから上がって来たが、鑓温泉の上はデブリが激しいので上に行くのは止めたと言っていた。

鑓温泉                        鑓温泉から見る鑓沢と小日向のコル     鑓温泉から見る白馬鑓ヶ岳
    

   直ぐに6,7名のグループは温泉を出て槍沢を下って行ったので静かになった。温泉に入り缶ビールを飲みながらあたりの景色を眺めゆったりとした気分。一時間近く温泉でゆったりとした後、男女2人ずれにお先にと言ってスキーを付け槍沢を滑り降りた。雪は汚れていてでこぼこだが大出原の柔らかくて雪崩れやすい雪よりずっとマシで滑りを楽しんだ。滑り降りてスキーにシールを付け小日向のコルまでハイクアップ。この上りは疲れてつらかった。

鑓沢を滑る                     小日向のコルから見る白馬鑓ヶ岳と杓子沢    小日向のコルから見る鑓沢
    

  コルでシールをはずして先行のトレースに従い左側の長走沢に向かって滑り降りた。長走沢は雪面のでこぼこが激しくて汚れており滑りは快適でないがそのまま下まで滑り降りた。林道との合流点では朝見た通り雪が切れていて沢の水が轟々と流れておリスキーでは通過できない。手前でスキーをザックにつけて右岸を歩いて降りた。途中で水芭蕉の群落があり花が咲いているのを見つけた。人知れずこんな所に咲いているのかとしばらく立ち止まって眺めた。
          
          水芭蕉の群落
             

  右岸を下り林道に出た。朝通過したスノーブリッジの箇所は溶けて切れていた。そこから林道を歩いて下り猿倉まで戻り車を回収。倉下の湯に入った後、明日の山スキーのため大町、扇沢に向かった。

   GPSトラック