爺ヶ岳(2670m)、鹿島槍ヶ岳(2889m)

 
  ゴールデンウィークの後半の5,6日の長野県北部は天気が良いとの天気予報であった。山や高速道路の込み具合も最盛期よりかなり減ったと思われる。今年は鹿島槍に山スキーに出かけようかと計画した。鹿島槍ヶ岳や爺が岳は山スキーで行った経験が無いが、GW期間中には冷池山荘が営業しており鹿島槍ヶ岳に行くのには都合が良い。

  学生時代の研究室の2年先輩のTさんが2年前のGW後半に単独のテント泊で
爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳に行ったというHPを見て、自分は山小屋泊まりだが山スキーに行こうと考えた。

  4日の昼過ぎに自宅を出て5時過ぎに大町温泉郷に着いて薬師の湯に入った。その後、車で扇沢の橋の手前の駐車場に車を停めて春山登山の案内、注意の掲示を見て様子を見るため少し登山道を上がって見た。登山道には雪が無くとてもスキーが出来そうで無いことが分かった。

  そこで、橋を渡った駐車場に行き車を停めて様子を見た。堰堤を作った時の作業道は雪と枯れ枝に覆われていた。この作業道に沿って右岸を辿っていけば扇沢の雪渓に出られそうだと言うことを確認してから車中泊。


5月5日(木) 快晴、風弱し


単独
登行高度:1380m 滑降高度:250m
扇沢橋(5:30)-爺ヶ岳南峰(12:25〜13:10)-爺ヶ岳南峰と中峰の鞍部(13:30)-冷池山荘(14:20)

   朝5時前に起床。簡単な朝食をを取り準備して5時半にスキーを担いで出発。一番上の堰堤を乗り越えるのに少し苦労したが、無事に広い扇沢の雪の上に出た。雪面は汚れておりデコボコしていたが、朝早いため雪が締まっていて歩き易い。そのまま、スキーを担いで緩斜面を歩いて進んだ。対岸の登山道を行く登山者はいるようだが、扇沢を上がるトレースも無くただ一人。

  上がるにつれて両側から落ちてきたデブリが出てきた。沢が左に曲がって扇の要の様にいくつかの支沢が集まっているあたりから谷は狭くなりデブリが沢山出てきた。中には新しいデブリもあり歩きづらい上に気分も良くない。そこで、適当なところで右側の尾根の方に上がって行った。

扇沢下部を行く(右上が爺ヶ岳)           爺ヶ岳を目指してハイクアップ           爺ヶ岳から見る種池小屋と剣岳
    

  陽が差して暑くなって来た。雪が緩んできて坪足で歩くのが大変になったのでシール歩行に変えた。斜面が急になりジグを切りながら上がって行った。あたりはダケカンバがまばらに生えているだけである。最後の稜線に上がる手前の急斜面でスリップして10mくらい滑落しかけたが、ストックを使って制動して止めることが出来た。雪が緩んで柔らかくなっていたので事無きを得たが肝を冷やした。持参したクトーをつけて上がるべきだった。

  スキーをはずして担ぎ坪足で上がり雪庇の切れ目から稜線に上がることができた。左側には種池小屋が見えた。ここから稜線上は緩斜面になる。再びシール歩行に切り替て歩き出したら急に足がつって痛い。痛いのが収まるまでしばらく休んだ後、、目の前に見える爺ヶ岳南峰を目指してのハイクアップ。

  7時間近くかかってようやく南峰に到着。途中デブリの上を歩いたり、スリップしたり、足がつって休んだりしたので予想以上の時間がかかってしまった。これから下山する2人ずれがいた。天気は快晴、無風で暖かい。疲れたのであたりの眺望を楽しみながらゆっくりと昼食の休憩。白沢の雪面を頂上から滑り降りたら楽しそうだが、上り返しがつらいのでただ眺めるだけにした。

爺ヶ岳から見る針の木岳                爺ヶ岳から見る鹿島槍ヶ岳           白沢
    

  スキーを担いで爺ヶ岳南峰と中峰のコルまで歩いた下った。ここで、スキーを付け爺ヶ岳の稜線沿いの下をハイ松が出ているところを避けながらトラバースを続けた。一箇所雪庇を避けるためスキーで少し登ったところがあるが殆んど斜滑降を続け、後半は林間を通り冷池山荘の下の鞍部に出た。後はスキーを担いでわずかの登りで冷池山荘に出た。

  冷池山荘に宿泊をお願いして、ビールを買った。暖かい陽を浴びながらベンチに座りビールを飲み、立山、剣、鹿島槍など周りの山々の眺望を楽しんだ。苦労して来た甲斐がある。

  本日の宿泊者は5,6名。他に山荘の前の広場にテントが2張りあるだけ。山スキーは自分一人だけ。山荘の人の話ではGW前半にも山スキーで上がってきた人は5人だけであったとのことであった。


5月6日(金) 快晴、風弱し

単独
登行高度:790m 滑降高度:1890m
冷池山荘(6:30)-鹿島槍ヶ岳(9:00〜9:30)−コヤウラ沢経由−冷池山荘(11:10〜11:20)−爺ヶ岳南峰(13:05〜13:30)-扇沢橋(15:20)


   山小屋の朝食は5時から。食事を食べながら同宿者と話をしながらゆっくりと朝食。荷物の一部を小屋にデポして準備してスキーをザックに着けて担ぎアイゼンを着けて出発。今日も晴れて風も無い。比較的暖かいが頂上からの雪が緩むのを待つため登山道をゆっくり歩いて行った。途中、登山者に次々と追い抜かれていった。布引岳の急な登りをゆっくりと上がり切ったところで、目の前に鹿島槍ヶ岳が見えてきた。しばらく行くともう頂上を往復して戻ってきた人に出会った。
  登山道は殆んど雪が消えているし、雪は柔らかいようなのでアイゼンをはずした。途中、登山道の直ぐ傍に雷鳥が止まってしきりに鳴いていた。ゆっくり歩いているうち数名の登山者が降りて来た。

布引岳(雪庇が今にも崩れそう)           雷鳥                          鹿島槍ヶ岳(左斜面が滑ったコヤウラ沢源頭部)
    


  最後の登りで雪に覆われた頂上到着。登山者が一人いた。風も無く温かい。剣岳、立山が目の前に見える。五竜岳から白馬岳にいたる山々、反対側は爺ヶ岳から針の木岳にいたる山々、薬師岳、黒部五郎岳、双六、三俣蓮華などの山々など周囲の眺望をゆっくりと楽しんだ。その一人の登山者も下りて行き独りになった。

頂上から見る剣岳                    立山                          薬師岳、黒部五郎岳
    

  頂上でスキーを付けハイ松の隣の右側の雪がついているところをゆっくりと横滑り気味に降りてハイ松の下に回りこみ広いコヤウラ沢の最上部に出た。雪はざら目雪だが未だやや硬く、ターンするごとにガリガリ音を立てる。斜度はほどほどの快適な広い斜面だが、ここでこけると大変なので慎重に数ターンして止まっては滑り降りた。下に降りると雪は緩んで快適なすべりとなったが、下りすぎると上り返しが大変なので左側にトラバース気味に滑り降りた。布引岳から続いている布引尾根の雪庇の間を越えるため、わずかにスキーで上り布引沢を下った。後は森林帯の中をトラバースを続けた。斜滑降と上り気味の歩きを加えて出来るだけ上り返しをしないようにして稜線の下を回りこみ冷池山荘の下の鞍部に出た。

頂上から見る五竜岳、白馬岳            頂上から見る鹿島槍北峯              冷池山荘
    

  ここから、わずかに山荘まで上り返してデポしていた荷物を回収。スキーをザックにつけて担いで爺ヶ岳南峰までの稜線上の登山道の歩きを続けた。これから上がってくる2人ずれの登山者に会い少し話をした。天気予報では明日は天気は悪いと言っていた。他人事ながら少し心配。最後の登りで南峰に到着。

  ここで、ゆっくり昼食の休憩。今回最後の眺望を楽しんだ。頂上からハイ松の下のスキー滑降開始地点までわずかに歩いて下りスキーをつけ滑り出そうとした時、種池小屋の方から上がってくる人がいた。扇沢から上がって来たのですか?と尋ねると、種池小屋の人だとの話。今シーズンは扇沢から上がってきた人の話は未だ聞いていないので様子は分からないが、爺ヶ岳からダイレクトに降りる谷筋は下のほうが滝が出ている可能性が5分5分で、場合によりクライムダウンが必要でしょうとのこと。一方、昨日上がってきた種池小屋の方から下るルートは下部は新しい雪崩が起きており注意して降りて下さいとのこと。

  ダイレクトに扇沢に下りる広い沢は雪面がきれいで魅力的だったが、滝の様子が心配だったので、種池小屋のほうにトラバース気味に滑り降りて、昨日上がってきたルートを辿ることにした。上部は雪がほどほどに緩んで快適な斜面。ダケカンバが点々と生えている広い尾根筋を滑り降りた。下るにつれ雪がグサグサとなリ、ターンすると表面がずり落ちてきた。おまけに何箇所かクラックが入っており急な所では崩れて雪崩が起きる恐れがある。時々止まっては下の様子を見ながらクラックを避けて滑り降りた。扇沢の対岸の上の方を見ると新しい雪崩れが起きたようである。

扇沢への下り                     扇沢への下りの途中で滑った所を見上げる    デブリに覆われた扇沢
    


  最後に尾根から扇沢に下る所で、上りに通った右側に行けば扇沢に入るがデブリの中を歩くのを嫌ってそのまま尾根を降りた。ところが、最後の急なところでブッシュが出ており雪が切れていた。ほんの3,4mだが、スキーをはずして降り掛けたがスリップして転んだ。下は扇沢の沢底で問題は無かったが、転び方が悪かったらしくストックを持っていた肩をひねったようで少し痛い。

  デブリの横の安全な所で少し休んで痛みが収まってからスキーをつけた。少し行って問題の滝の所で上を見上げたが爺ヶ岳まで雪面がきれいで上まで続いていたが、滝は一部出ていて左岸沿いに通過できるかどうかは微妙な所であった。左岸をクライムダウン出来そうな気もしたが、スリップでもしたら大変。やはりダイレクトに降りないで良かったようだ。

  後は緩斜面の扇沢をデブリを避けながら滑り降りた。仕方無くデブリの上を通過した箇所もあったがデブリも緩んで柔らかくなっていてスキーをはずすこと無く通過した。デブリ地帯を抜けると広い緩斜面を楽しんでスキーを滑らせた。昨日に増して雪は溶けたようで、沢が口を空けている所が広がったようであった。右岸を落ちている石や木を適当に避けながら滑り降りて最上部の堰堤に到達。堰堤を越える所でスキーをはずして降りたが、ここでもスリップして2,3m落ちた。

   後は雪を拾いながら滑り降りて雪が繋がらなくなったところでスキー終了。わずかの歩きで駐車場に戻った。流れている溝でスキー、スキー靴を洗った。その後、大町温泉郷の薬師の湯に入り帰りに着いた。

   今回初めて爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳に行ったが、扇沢はデブリが多く、鹿島槍はトラバースや担ぎが多かった。登山者には何人もあったが、山スキーは自分一人だけであった。小屋の人の話ではGW前半でも山スキーは5人だけで、しかも扇沢のルートを取らなかったとのこと。やはり、針の木岳、蓮華岳、立山、剣岳方面の方が山スキーをやるには良いかなと思った。

  GPSトラック