5月3日(月)〜5日(水) 晴れ、風弱し

北穂高岳(3106m)、涸沢岳(3110m)
単独
   
   
今年のGWは涸沢に行き、奥穂高岳、北穂高岳の山スキーに行くことにした。山スキーで涸沢に行くのは今回が初めてである。出来たら涸沢の山小屋がすいてくる4日か5日からにしたかったが、天気予報では6日から天気が崩れるとのことで、3日から5日までの間に行くこととした。

   残念ながら、条件が悪く奥穂高岳に上がることが出来ず奥穂の直登ルンゼの滑りは出来なかった。4日には北穂高岳からの滑り、5日には白出のコルからの滑りが出来たが、両日とも気温が高く数日前に積もった雪が重い上にいたるところに小規模なデブリがあり、ターンするごとに小さな雪玉が落ちてきて快適な滑りとは言えなかったが、涸沢周辺の山スキーを好天の中で出来たのは幸いであった。

   また、涸沢は上高地からの歩きが長く、アプローチが良くないと感じた。上高地からで無く、新穂高温泉から白出沢を経由してコルまで上がるルートもありそうである。

   
5月3日(月) 晴れ、風弱し

 
単独
登行高度:120m 

上高地(10:40)-横尾(14:20)

   朝早く自宅を出て北関東自動車道、上信越道、中央道を経由して松本ICで降りる。GW後半の下り線で渋滞は全く無かった。松本から沢渡に行き駐車場に車を駐車。大きな駐車場がほぼ満車。用意して上高地行きのバスに乗った。バスは満員で大勢の人が上高地に行くようである。10時20分頃上高地に着いた。

   上高地の登山カード受付所で登山届けを書いていると、係りの人がやって来てどこに行くのかと聞かれて注意を受けた。その人の話では28日に涸沢周辺では60cmの新雪が積もり、29日には横尾から先に行くことが禁止であった。また、2日には涸沢の小豆沢で雪崩事故があり3人が怪我をしたとのことで、奥穂高岳に上がることは禁止。まだ、雪崩が落ちきっていないので、奥穂高岳も北穂高岳も登山は難しいでしょう。涸沢に着いたら山小屋の人に相談してくださいとのことであった。

   この話を聞いて一気にテンションが下がった。とりあえず、スキー靴はザックの中にいれ、スキーをザックに着け、運動靴で歩き出した。明神に至る遊歩道は観光客で一杯である。スキーやボードを担いで上がっているのは槍ヶ岳に行くという4人のグループだけであった。スキーを担いで帰って来る人がかなりいた。明神を過ぎた所でボードを担いで降りてきたRSSAの林さんにお目にかかり、少し話をし涸沢の状況、途中の雪の状態を伺った。

   徳沢で昼食の休憩。休憩後ゆっくり歩いて横尾に着いたのは2時半近くになっていた。頑張れば5時半ごろには涸沢に行けるが、テンションが下がっているので無理に行くことも無いと本日は横尾山荘に泊まることにした。


     上高地、河童橋後ろは焼け岳                    横尾
         

   涸沢から降りてきた同宿者から話を伺った。2日は涸沢ヒュッテに涸沢から上に上がるのほ自粛するようにとの張り紙が張ってあったとのことで、その張り紙の写真を見せてもらった。また、その日雪崩に巻き込まれて3人が怪我をし一人はヘリで搬送されたこと、奥穂高岳に上がるのを岐阜県警が制止していたこと、3日には北穂高岳に上がることが出来たことなどを伺った。上高地の登山届けの所で聞いた話とほぼ同じだが、3日には上に上がれたとのことで少しホッとした。


  5月4日(火) 晴れ、風弱し

単独
登行高度:1490m 滑降高度:790m

横尾(5::40)-本谷橋手前シール歩行開始地点(7:25)-涸沢(8:35〜9:30)-北穂高岳(13:20〜14:10)−涸沢(14:50)

   朝食を取らずに横尾山荘を出発。5時に出る積りだったが少し遅れた。初めは運動靴で歩いた。横尾の橋を渡りしばらくすると登山道に雪が出てきたが、朝早いためまだ凍っていて運動靴でも濡れること無く歩きに問題ない。登山道の周りの雪がだんだん多くなって、本谷橋の手前の完全に雪がつながっている所で休憩し朝食のパンを食べた。ここで、兼用靴に履き替えスキー板にシールをつけた。やっと兼用靴とスキー板の重さから開放されてシール歩行で快調に高度を上げていった。登山道を通らず最短距離と思われる所を行けるので、登山者を追い越して進んだ。天気は快晴で目の前に見える穂高連峰が青空に映えて美しい。気温が高く風も無く暖かい。

本谷橋を過ぎてスキーでハイクアップ      涸澤、一見ヨーロッパアルプスの様子    ザイテングラードを登る人がけし粒のように見える
    

   3時間で涸沢に到着。涸沢ヒュッテに宿泊をお願いした。奥穂高岳に上がってスキーで滑り降りたいのだがと尋ねたが、白出のコルから滑るのは良いが奥穂高岳からは駄目だと言われた。部屋に入り少し休憩した後、余分な荷物を置いて用意して北穂高岳を目指してハイクアップ開始。大勢の人が北穂高岳を登っているのが見えた。それより数は少ないがザイテングラードの右側を白出のコルを目指して上がっている人も見えた。しかし、左側の小豆沢を上がっている人はいない。2日に小豆沢で雪崩事故があったため、小豆沢を上がることは禁止されたようである。

北穂高岳と黒点に見える大勢の登山者        前穂高岳                    常念岳
  

   初めは少し硬かった雪が気温が高くなり、柔らかい雪となりシール歩行がやり易い。急斜面になった所でアイゼンを着け、スキーをザックにつけて担いで歩き出した。途中で2、3人の山スキーヤーが向かって右側の北穂沢の斜面を降りているのが見えた。最後の急斜面を上がりきって松涛のコルに達した。ここからトレースに従い北峰に上がった。南岳から槍ヶ岳、常念岳、涸沢岳、奥穂高岳、前穂高岳、笠ヶ岳など周囲の山々の眺望が素晴らしい。雪壁の間の雪の階段を下りて北穂高小屋の前に出た。


     北穂高岳南峰から見た北峰と涸沢岳、奥穂高岳          北穂高岳から見た南岳と槍ヶ岳の穂先
              

   ほぼ同じ時に前後して上がってきた登山者は北穂小屋に泊まるようで何人かが小屋の前でベンチで休んでいた。
風が無く暖かく、ベンチに座り周囲の景色を見ながら昼食を取り長い休憩。もっと長居をしたい所を切り上げてシールをはずし、靴のバックルを閉めてコルまで戻りった。

   殆どの人が既に降りているので周囲には登山者の姿が見えない。これから登ってくる人あるいは下降中の人は極わずか。午前中に大勢の登山者で賑わっていたのがうそのようである。お陰でスキーでターンをした際雪を落として登山者に迷惑をかけることが無い。初めは雪面が比較的きれいな右側をターンしながら滑った。雪は柔らかくなっていてやや重いがそれなりに楽しめた。


滑り降りた北穂沢を仰ぎ見る            岩の間を滑り降りる               ビールを飲みながら滑り降りた北穂沢を見る
  

  登山者が上り下りしたでこぼこの斜面を横切り左側の北穂沢の大斜面に向かった。随所に小規模なデブリがあるので、それを避けてできるだけ雪面がきれいな所を選んでターンしながら滑り降りた。雪はだんだん湿って重くなり、ターンするごとに流れて来るので、時々止まってやり過ごした。

   雪面のきれいな所を選んで滑って行ったら、岩の間の急斜面に入り込んでしまったが陽ざしが入らないためか雪がしまっていてむしろ滑りやすく、ショートターンで岩の間を通り抜けた。下に行くとさらに雪は緩んで重くなって来たが、緩斜面を滑り降りて涸沢ヒュッテに戻った。

  ほぼ同時に涸沢槍のコルの下のほうから3名の山スキーヤーが滑り降りてきた。彼らは北穂高沢を滑った途中で右側にトラバースした後、しばらくハイクアップしてから滑り降りてきたとのことであった。

  後は、涸沢ヒュッテのベンチに座り周囲の景色を見ながら、ビールを飲んでのんびりと楽しい時間を過ごした。風が無く気温も高く暖かい一日であった。

  本日は昨日と比べて人が少ないとのことだったが、今日下山した人が多いようであった。特にスキーの人が少ないので少し驚いた。
  

5月5日(水) 晴れ、風弱し

単独
登行高度:800m 滑降高度:1210m  歩行下降高度:380m

涸沢(6::50)-白出のコル(9:35−9:45)-涸沢岳(10:10〜10:25)-白出のコル(10:40〜11:10)−涸沢(11:40〜12:30)-
本谷橋先スキー終了地点(13:00)−横尾(14:15〜14:35)−上高地(17:35)


   今日も好天気で風も無く暖かい。朝食後、不用な荷物は小屋に置いて少し身軽になって、シールをつけて準備してハイクアップ開始。ザイテングラードのかなり上を上がっている先行香の登山者が2,3名が見えた。また北穂高岳に上がっている人も数名見えたが、昨日と比べると非常に少ない。涸沢にあるテントの数も少ない。今日はGWの最終日で、明日から天気が崩れるという天気予報であったので、泊まっていた登山者の多くはそのまま下山するようであった。

   ザイテングラードの右側を上がって行った。朝なので雪は少し硬かったがカチカチの状態でなく緩い斜面で上りやすい。初めは快調に上がったが、だんだん斜面が急になってきた所で、後続の4人の山スキーヤーに追いつかれた。昨日、北穂沢で滑り降りるのを見た人たちで、今日は白出のコルまで上がり白出沢を滑って下ると言っておられた。


ザイテングラードを上がる                 奥穂高岳直登ルンゼを仰ぎ見る             コルからの前穂高岳と涸沢
    

   急斜面でシール歩行が困難になった所で、スキー板をザックにつけアイゼンをつけてこの4人に続いて上がって行った。途中で、当初滑る予定であった奥穂直登ルンゼを見上げたがそれほど急斜面のようには見えず、自分のスキー技術でも条件が悪くなければ行けそうな気がした。しかし、小規模な雪崩によるデブリが見られ状況が良く解らないし、小屋の人にも駄目と言われたので奥穂に上がるのはあきらめた。

   最後のきつい登りを上がりコルに到着。奥穂小屋の前のベンチにザックを置いた。丁度、岐阜県警のヘリが小屋の横の雪の上のヘリポートに止まるところであった。


        降りてきた岐阜県警のヘリコプター                涸沢岳から見た常念岳
              

   奥穂高岳の方には登山者2名が上がっているのが見えた。夏には何でもない登山道であるハシゴの上の雪の斜面が凍っていることが多く危険なようで、その下には滑落防止の鉄柵がはってある。

   スキー、ザックをベンチに置いたままカメラだけを持って右側の涸沢岳に上がって行った。途中で大きなカメラと三脚で写真を取っている人を見ながら横を
上がって行った。標高が高くなったためか、斜面の向きが直射日光を受けにくいためか少し雪が硬くなり、アイゼン歩行が容易になった。

  少しの登りで涸沢岳の頂上に到着。たった一人で頂上からの周囲の山々の眺望を楽しんだ。少しして単独行の登山者が上がってきた。風も無く暖かいので2人でしばらく頂上に留まって写真を取り合った。

       涸沢岳頂上で奥穂高岳をバックにして               涸沢岳から見た南岳と槍ヶだけの穂先
             

   頂上から小屋まで戻った時には先ほどの4人の山スキーヤーは見えない。かなり前に白出沢を下っていったようである。小屋の前のベンチに座り行動食を取りながら、頂上から降りてきた単独行登山者と話をした。

   この方は私より少し歳が若いが、昔は皮製の登山靴でワイアー式のビンディングのスキーで山スキーをやっておられたと言っていた。現在の山スキー用具について色々聞かれたが、値段が高いのに少し驚いていた。また。コルから小豆沢を滑り降りると言ったら、良くこんな急斜面を降りますねと感心された。

   そう言われて自分も30年前に皮製の登山靴で山スキーをやっていたことを思い出した。その当時の用具ではこのコルからの斜面などは急すぎて怖くて降りれなかった。山スキーの道具の進歩があって急斜面の上り下りが可能になったことを改めて感じた。山スキー用具の価額は高く、金銭的にも体力的にも余裕のある人の趣味かななどとも思った。

   ここで長居をしたのでこの単独行登山者に分かれて小豆沢を下った。ターンするごとに緩んだ雪が崩れ落ちて行き、滑りとしては快調とは言えない。時々止まって雪が落ちるのを待ってから滑っていった。斜面が緩くなってきた下部になるとずり落ちる雪は減ってきたが緩んだ雪が重い。それでもスキーの滑りは楽しい。

   涸沢ヒュッテまで戻り、置いてあった荷物を回収。ヒュッテの前のベンチに座り、自分が滑ってきた斜面あるいは周囲の穂高連峰を見ながら、生ビールとおでんで長い休憩。


     滑り降りた小豆沢を見上げる                   涸沢のスキーでの下りも最終段階
        

   もっと居たい所だが、上高地発の最終バスに乗り遅れないように、用意してスキーで下る。雪は重いがザラメでしまって来ていて滑りやすい。登りで苦労した涸沢沿いも登山道を少し離れた所を快適に下リ、登山者を追い越して行った。本谷橋の少し先でスキーは終了。まだ雪が残っている登山道を歩いて下った。橋を渡り横尾に到着。

   ここで、兼用靴は運動靴には着替え兼用靴はザックに入れてスキーはザックに付けた。少し休んでザックを担いだが、ズシリと重く感ぜられた。後は上高地を目指して平坦な道を歩くだけである。

   3日には非常に大勢の登山客、観光客で賑わっていた道がうそのように人が少ない。時々登ってくる登山者、家族ずれに会うだけであった。今年のGWももう終わりと言う事実を実感しながら歩いた。

   徳沢、明神を過ぎて歩くのがうんざりするのを我慢してようやく上高地に到着。河童橋も人が少ない。上高地バス停では沢度行きのシャトルバスはもうお終い。6時5分発の最終の新島々行きのバスに30分ほど待って乗り、沢渡の駐車場まで戻った時には薄暗くなっていた。

   沢渡の日帰り温泉に入り汗を流した後帰路に着いた。GWの最終日の夕方以降で高速の渋滞は全く無く帰りつくことが出来た。