種子と品種改良、F1種子

1.販売されている種子

 
  種子は比較的大きな種苗会社により開発されてホームセンターや農業資材店で売られている。また、インターネット、カタログなどを通して通信販売で購入できる。イタリアなどの珍しい野菜の種子を輸入して通信販売しているところもある。外国のものは病害虫のチェックのため検疫を受ける必要がある。外国で購入した種子も検疫を受けてOKとなれば入れることが出来る。

   種子の袋の裏を見ると生産地の殆んどが外国である。新品種の開発などは日本国内で行われているものも、種子の生産は外国で行われているようである。伝統的な日本野菜でも種子は外国産のものも多い。

   外国の方が広い採種用の畑を確保出来、人件費などのコストが安い。ある野菜の栽培に適した気候条件、地理条件は外国の方が良い。病害虫などが無いなどが理由のようである。


2.種子の保存
 
  家庭菜園では畑にまく種子はそれほど多くない。そこで、袋に入っている種子も余ってしまう。発芽率は時間が経つにつれ落ちてくる。室温で放置しておけば、品種によって異なるが翌年には発芽しなくなる。

   しかし、冷凍庫で保存して置けば、種子も随分長持ちする。これまでの経験では品種によって異なるが最低でも3年は保存出来た。長いものだと10年以上毎年少しづつ冷凍保存していた種を使っても充分発芽して使用出来た。

   酵素などは室温に置いておけば失活してしまう。しかし、冷凍保存しておけば大丈夫である。大腸菌などはー78度のドライアイス温度で保存する。また、哺乳動物の細胞はー180度の液体窒素温度で保存する。生物試料は低温で保存するのが鉄則。種子でも例外で無い


3.種子の品種改良、交配
 
  野菜や米の味、形、色、大きさ、作りやすさ、病害虫に対する抵抗性など品種によって大きく異なる。そこで、農事試験場、種苗会社は多大な努力を払って品種改良を行っており、毎年新しい品種が出ている。日本の野菜、果実、米は非常においしいと思う。野菜や果物のおいしさは栽培法にも寄るが、一番の決め手は品種ではないかと思う。

   品種改良の主な方法は交配だが、交配する種のめしべとおしべをきちんと管理し、何代にも渡って育てて品種として固定化する。他の品種と自然交配するのを避けるため隔離して栽培する必要がある。

   異なる品種の野菜を近くに植えておくと自然交配し、両者の中間みたいなものが取れることが多い。そのような種子を採種して育てて見るとメンデルの遺伝の法則を見ているようである。

 
西瓜の例 (形は違うがいずれも甘くておいしかった)

ラグビーボール型の西瓜(F1)           大玉西瓜(F1)                2者が自然交配した西瓜

      



   白菜、キャベツ、ミズナなど十字花科の野菜は近くに植えておくと簡単に交配する。その種からは見たことが無い妙な野菜が取れる。

白菜とミズナとの交配の例 (F1白菜の種子を採種。ミズナと自然交配したようだ)


  白菜(結球したもの)                   白菜(トウが立ちつぼみが付く)              ミズナ

     

                
  両者が自然交配した?種子より育ったミズ菜(?)。葉物野菜として味は悪くない。
                      

 
4.F1種子
  
 交配種あるいはHybridなどとも言われる。種子の袋にはF1, ハイブリッド(Hybri) 或いは交配と書かれている。最近売られている種子の多くががF1である。

   品種的に比較的遠いもの同士を交配させて作った人間にとって良い性質を持った一代雑種。ロバと馬の交配した一代雑種がラバとなるのが例である。

   一代雑種の野菜は味が良かったり、育ちが一様であったり、病害虫に強かったりの良い性質を持つ。しかし、遺伝的に固定されたもので無く不安定で、不稔性で種が出来無かったり、2代目に受け継がれず種が出来ても発芽しなかったり、種から発芽しても2代目の種子は遺伝的に一様で無いため必ずしも良い性質を受けているとは限らない。

   そこで、自分の所で収穫したものから種を取って使うことが出来ず、毎年種苗会社から種子を購入する必要がある。種苗会社も毎年農家が買ってくれるので安定して利益を確保できる。自家採種して固定した在来種、伝統野菜などを作っている農家、篤農家はF1種子に対して批判的である

   F1種子の白菜、西瓜、カボチャなどから採種して2代目の野菜を作って見た。発芽しなかったものもあるが、発芽率は落ちるものの2代目を収穫できたものが多い。確かに遺伝的に不安定で一代目と同じ物が出来ないが決してまずくない。趣味で菜園をやるものとしては色々の性質を持ったものが取れて面白い。

   さらに、F1種子の野菜と近い品種の野菜が交配したと考えられるものも出来ることがある。こうなると、受け継いでくる遺伝的性質はより沢山の可能性がある。系統的なことが分からないが趣味でやる分には面白い。

   しかし、プロの多くの農家は一定の基準の作物を大量に供給する必要があるので趣味などと暢気なことを言っていられないし、採種の手間を考えたら種子を買って栽培することになる。